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オメガ  オーバーホール 修理 (有)友輝 全国配送対応

オメガ スピードマスター3511.20オーバーホール

  • オメガ スピードマスター 修理

    停止せずに動作していたため、「そのうちオーバーホールしなきゃ」とは思っていたものの、気がつくと15年間オーバーホールせずに毎日使用し続けてしまい、いよいよ停止してしまったオメガ・スピードマスター・オートマチック3511.20です。

    このモデルの特徴として、年数を経るとベゼルに刻印されたタキメーターの塗装が剥離して画像のような状態となり、なんとも中途半端というか、ちょっとみすぼらしい印象を与えます。

    このように15年間オーバーホールされていなかったスピードマスターは、どれだけの交換部品や作業が必要で、どのくらいの費用がかかるのでしょう?

    オメガ スピードマスター プッシュボタン

    使用年数を重ねたスピードマスターの場合、オーバーホール料金がかさむ原因となるのは、このプッシュボタンの交換が発生する場合です。

    オーバーホールせずに10年以上使用しますと、画像のようにボタンと本体ケースの間をつなぐ真鍮製のチューブ部に汗や汗に含まれる有機物、湿気、空気中のホコリやゴミが付着し、緑青の発生や腐食が進行する原因となります。
    その結果、ボタンの動作が妨げられたり、最悪の場合ボタンの脱落といった不具合を招きます。

    4〜5年ごとにオーバーホールをしていれば、腐食が発生する前に超音波洗浄でクリーニングが出来ますので、プッシュボタンの寿命を伸ばすことが可能です。

    この画像のような状態になりますと、当然交換が必須となります。
    通常、上下同じ状態で劣化が進みますので、2個交換となり、¥3,150×2=¥6,300がオーバーホール料金に加算されます。

    あり得ない例えですが、当社がオーバーホール基本料金を格安に設定するとしましたら、このプッシュボタン代をもっと高く設定しますね。

    または、この状態でもとりあえずは作動しますので、トータルの修理料金を抑えるために未交換のままお茶を濁し、1年後に動作不良や脱落が発生したとしても「保証期間は過ぎてますので再度オーバーホールが必要です」と知らん顔を決め込むか、どちらかの方法を採用します。

    もちろん、そんな事は致しませんのでご安心ください

    オメガ スピードマスター ブレス

    本体とブレスをつなぐ「バネ棒」も御覧のような状態です。

    当然サビついて固着しているので、この状態のまま無理に外そうとすると、バネ棒が傷だらけになるだけでなく、工具を滑らせてブレスやケース本体に大きな傷をつける恐れがあります。

    こういった場合は以下のような対処方法が考えられます。
    1.内部の機械を取り外したのち、このまま洗浄用の超音波洗浄機にかける。
    超音波の微振動でサビの固着が分解され、バネ棒の可動部が動かせるようになります。
    ただし、ベゼルに刻印されたタキメーターのプリントはさらに剥がれ落ちる可能性が高くなります。

    2.バネ棒の周辺をアルコールランプで炙る
    そうすると熱でサビの固着が剥がれる事があります。
    ただし、熱によって周辺のステンレスが変色する恐れがあります。

    この方法でバネ棒が外れれば、ケースやブレスの研磨/仕上げを施して変色をした部分を元に戻す事も可能なのですが、かなりの手間がかかりますし、何より変色までさせたのに、最悪バネ棒が外れない場合は変色部を研磨し切れずに変色したままになってしまう、という悲劇が待っています。

    3.フラッシュフィット交換を前提で、糸鋸でバネ棒を切断してしまう
    やや強引なこんな方法もありますが、ケースやブレスにダメージを与えてしまう恐れもありますし、何より怖いのは、切断に成功してもバネ棒の先がケースと一体化して外れない状態になってしまう事(=ブレス再装着が出来ない)事です。

    4.使用に差し支えない場合がほとんどなので、どうしても外れない場合そのままにする。

    実は一見手抜きとも解釈されかねない、この「そのまま」にする判断が難しいのです。無理に作業を進めて回復の難しいダメージを与えてしまうより、よっぽど悪影響が無いのです。

    どうしてもブレスを外さざるを得ない場合を除き、超音波洗浄を行ってもダメなら、この「そのまま」方式で、2と3の方法までは行なわないほうが無難です。

    オメガ スピードマスター 修理

    裏蓋を開けて内部を覗くと、ご覧のように各部品の表面が曇って変色しています。
    これは、プッシュボタンから侵入した湿気による影響です。

    それにしても、これだけ湿気が浸入した痕跡があるにもかかわらず、スチール製の部品にあまりサビが発生していない事がわかります。

    これは、部品の表面処理やメッキ技術の進歩によるものです。

    1970年以前のクロノグラフの場合、このプッシュボタン周辺に酷いサビが発生しているものが少なくありません。
    いわゆるアンティーク時計と呼ばれている、この時代までの時計が同じ程度の湿気にさらされた場合、とても部品表面の曇りだけでは済まないでしょう。

    「1970年までに製造された中級メーカー以上のアンティーク時計は現行品のようにコストダウンされた設計では無く、加工・材質が優れているので、防水性能以外のほとんどの面で現行品に勝る」
    以前雑誌等でよく目にした記述ですが、そう言っていたのは、アンティーク時計を売る側の人達ばかりだったような・・・

    偏らず俯瞰的に判断すると、アンティーク時計が持つ独特の雰囲気の良さはあるものの、防水性に難が有る他にも、電磁波による磁気帯びには決定的に弱いため、現代社会では普遍的な実用品として通用しない面がある事もうかがい知れます。

    その逆で現行品は、防水性や耐磁性に優れ、ハイビートによる安定した精度が得られる反面、嗜好品としては画一的で無機質なところが魅力に乏しいと感じる方も多い事など、様々な事柄を冷静に見極める事が出来ます。

    15年間オーバーホールに使用し続け、各部にダメージが見受けられたスピードマスター・オートマチック3511.20の見積もりは以下の通りです。

    オーバーホール  ¥31,500
    ゼンマイ交換 ¥2,625
    パッキン交換 ¥735
    プッシュボタン×2 ¥6,300
    巻き上げ車交換 ¥2,100
    センタークロノ針交換 ¥1,575
    バネ棒×1 ¥735
    合計 ¥45,570(※修理完了時の価格です)

    機械式時計は4〜5年に一度のオーバーホールが前提で設計されていますので、このスピードマスターの場合、15年間で3回目のオーバーホールを迎えていたとしてもおかしくはありませんが、この価格が高いか安いかは個人の判断や主観で異なります。

    近いうちに、同じ料金、施工でも「個人の主観で満足度はこれだけ異なる」という具体的な事例も紹介したいと思っております。

    オメガ スピードマスター 3511.50

    オーバーホールが完了し、お引き渡し直前のスピードマスターです。
    今回の作業でポイントとなったのは、ガラス外周のタキメーターベゼルです。

    お預かりの段階で、既に経年劣化によってペイントの剥離が進行しており、超音波洗浄によりさらに剥離が進行する事が予想されました。
    さらにはバネ棒が固着している事から、バネ棒を外すために超音波洗浄を通常より長時間行う必要があった事から、お客様には見積もり段階で以上のようにお伝えしました。

    「タキメーターのペイントは超音波洗浄により、現在より剥離が進行する事が必至です。費用をかけて再プリントする方法もありますが、ベゼル本体の経年摩耗の為、塗料の入る溝が浅くなっており、直後は大丈夫でも又すぐに剥離してしまう可能性が高いため、根本的な補修は高価なベゼル交換しかありませんが、そこだけ新しくしても不自然ですし、何より費用面でおすすめいたしません。
    そこで、弊社からの提案としましては、思い切ってペイントを全て剥離してしまう事を推奨しております。中途半端にペイントが残っているよりも非常に自然な状態となりますので、多くの方にご満足いただいております。」

    お客様からは「了解いたしました。全てお任せいたします」というご返信をいただきました。

    作業が完了し、お渡した後に修理品をご覧になったお客様から「予想以上に自然な状態になっていて驚きました。剥離の可能性があっても再プリントをお願いしようかとも思っておりましたが、ご提案の通りにして良かったと思っております。」とのご感想をいただきました。

    時計をお預かりする際、お客様から主に外装面(目視できる箇所)について、様々なご要望をいただく事も多いのですが、現在の経年劣化による状態を把握したうえで、その後も時計として安定した動作を重視する場合、費用と技術的な面なども併せて考慮すると、当社では選択肢が極めて限定されるため、お客様のご希望される作業は決してお勧めしないだけではなく、むしろお断りする事も少なくありません。

    さらに最も重要な点は、目視できる外装箇所の場合、99%の方にご満足いただける仕上がりであったとしても、お客様の思い描いているイメージのレベルが高い、残り1%の方はご不満を抱かれる場合がある、という事です。

    そのため、当社の場合外装面に対しては「極力加工は控えて費用を抑え、時計として安定した動作を重視する」という考えを基本方針としております。