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ロレックスのベゼル交換についての解説/時計修理工房(有)友輝
時計修理工房(有)友輝
ロレックス 回転ベゼルディスク交換
サブマリーナ/GMTマスターの回転ベゼルディスク交換
GMTマスターのベゼルディスク、中でも青/赤は紫外線の影響で退色しやすい傾向があります。
このような状態になった場合、オーバーホールと同時にベゼルディスクの交換を希望されるお客様も多いのですが、当社では+@の利益になるからといって交換は決してお奨めしておりません。
ベゼルディスクは外周部にあたるギザギザの刻まれたベゼル本体に弾力摩擦ではめ合わせているだけで固定されているという点がポイントです。
ベゼル本体の経年変形やぶつけた際の歪み等で、新品ベゼルディスクとの嵌合にわずかな相違が生じてくるため、ベゼルディスクのみ交換すると、どうしてもディスクとベゼル本体の部品同士の相性の問題で脱落などの可能性が高まるのです。
新品時から装着されているベゼルとディスクは新品時からずっと脱落しないでいたという相性の良い”実績”があるのです。
画像はGMTマスターのものですが、赤丸で囲んだ個所に打痕があり、同時にディスクも変形しているのがわかります。
ディスクを装着する際はこの変形に抗うように圧入しなければならないので、ディスクの欠けや変形などを招きます。
そのため日本ロレックスではディスク交換の場合は、ディスク外周のベゼル本体、ベゼルディスク、下座となるガラス固定枠の3点セットでの交換を推奨しており、3点とも交換すると大変高価になるようです。
そのため紛失や再使用不可能な破損の場合を除き、ベゼルディスクの交換は積極的にはお奨めしていない作業である事をご了承ください。
サブマリーナのベゼル本体、ベゼルディスク、台座となるガラス固定枠の3点セットの画像です。
回転ベゼルは中心上に写っているガラス固定枠に摩擦と弾力で”パチン”と嵌っているだけですので、不適切な工具や方法で何度も脱着を繰り返したり、障害物に引っ掛けて外れるといった事故があると変形や伸びが発生し、外れグセがついて脱落しやすくなります。
こういった理由もあり、メーカーは3点セットでの交換を推奨するようです。
いくら交換はおすすめできないとはいえ、このようにディスクが完全に割れてしまっていると、ディスクを固定するのに必要な弾力が発生しないので交換が必要となります。
ベゼルディスクを入手しなければなりませんが、ロレックスの部品は近年大変高騰しており、特に目視可能な外装部品は”ロレックス純正部品”と称する精巧な偽造品が出回っているため、当社では仕入れを避けるようになりました。
お客様ご自身がネットオークション等でご自分の納得する状態の部品を調達して時計と一緒に渡していただければ、無理のない範囲でその部品を使用する事も可能ですが、こちらのお客様はそういった事まではされていないようです。
どうしてこのような割れが生じたのでしょうか?
元々ベゼルディスクにはルミナスポイント(夜光)を圧入する穴が開いています。
圧入ですから穴によって肉薄となっている箇所には常に圧力がかかります。
さらに長年オーバーホールをしないまま使用し続けると、ベゼルとディスク/本体ケースの間には皮脂有機物に加えて汗や水分の影響によるサビが蓄積されてゆきます。
サビが発生すると、その化学変化に伴って水素ガスが発生します。
その水素ガスがアルミ製のベゼルディスクを脆くさせる”水素脆化”という現象が発生し、肉薄のうえに圧力がかかるルミナスポイント周辺にヒビが発生して、このように割れて一部が脱落したものと推測しております。
これまでのオーバーホールがメーカー/公認技術店以外での作業であった場合、ベゼルを外してまでの洗浄を行っていなかった可能性も考えられます。
当社では以前から、ネジ本体の腐食/サビは見当たらないのに、周辺にサビが発生しているとネジの折損が多くなる事に注目しておりました。
そんな折、金属工学を専攻し時計ではありませんが開発メーカーに勤務している方とサビとネジ折れの関係について話しているうち、水素脆化の可能性を疑うようになった次第です。
私が汗や湿気の影響が大きい6〜9月の使用は避けた方が時計の寿命は延びる、と言っているのは上記のような理由もあります。
ただし汗の質は体質による個人差が大きいので、影響がほとんど無い方もいらっしゃいます。
数字の書体や目盛りのプリントなどに細かな差異はありますが、当社で調達した部品と交換する事により、ベゼルディスクはこのように回復いたしました。
この1983年に購入されたRef.16800サブマリーナは、当社の前に日本ロレックスへ見積もり依頼したところ「夜光塗料の劣化のため、文字盤と針を交換しない限りオーバーホール受付は不可能」という回答があったそうです。
高価な部品である文字盤と針の交換代金が加算されて想定以上の金額となった事もありますが、それ以上にオーナーさんは記念の品である、このサブマリーナの文字盤と針が交換されて、まるで別の時計のようになってしまう事を避けたかったのだそうです。
新たに交換される文字盤は一部のデザインが変更されているのと、針と共に夜光塗料の成分および色が変化しているために、見た目の印象が変わってしまうのは避けられません。
日本ロレックスは製造から35年以上経過した時計について、定期的にオーバーホールを施してきた、または状態が良好なものを除き、オーバーホールの受付を断る傾向にあるようです。
日本ロレックスに受付を断られる事態になったとしても、当社ではその後も出来るだけ永く修理が可能なよう、製造から20年以上経過した時計については、今から独自の見極めで選定した部品を積極的に使用する方針でおります。
ベゼル本体の経年変形やぶつけた際の歪み等で脱落の可能性が経年ごとに高まるため、ベゼルディスク脱落に関しての保証は出来ない事をご了承ください。
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