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ロレックス・サブマリーナRef.16610のオーバーホール は(有)友輝 へ

ロレックス サブマリーナ Ref.16610 オーバーホール

日本ロレックスでのオーバーホールを断念したサブマリーナ

  • 1993年に購入後、日本ロレックスで3回オーバーホール実施。
    今回も日本ロレックスに見積もり依頼したが、依頼せずに引き取ってきたというお客様から当社へお問い合わせがありました。

    製造から25年は経過していますが、現状で自覚可能な不具合は無く、これまで定期的に日本ロレックスでオーバーホールを行っていた事から状態はそれほど悪化していない事が予想されます。

    ロレックス サブマリーナ Ref.16610 文字盤


    お客様からお知らせいただいた日本ロレックスでの見積もり(交換部品)は以下の通りです。

    ●クリスタル(ガラス)は欠けがひどいため、交換必須。
    王冠マーク透かしの入った現行の物に交換。

    ●針は夜光塗料にヒビが入っている為、交換必須。
    現行の夜光塗料の針に交換するため文字盤のトリチウムと色が異なる。

    ●クラスプはバネ棒穴が広がっているので、交換推奨。
    交換しない場合クラスプのみ研磨は行わない。

    という回答で、針とクリスタルは交換しないとオーバーホールは受け付けられないという事でした。
    特に針はメーカーが交換必須と言ってるのだからと素直に交換したところ、予想外の事態となったお客様からの相談/問い合わせがこのところ相次いでおります。


    添付していただいた画像から、当社ではガラス、針、クラスプは交換しなくとも継続使用可能と判断したため、間もなく正式な見積もりのためにサブマリーナが送られてきました。

    現物を拝見したところ、クラスプの穴はわずかな変形はあるものの、当社では”今後5年の使用に支障無し”と判断する状態でした。

    ロレックス クラスプ 交換

    過酷な使用で発生するブレスコマ間の延びや摩耗、三つ折れ部の腐食や割れなども発生していません。
    当社基準で25年経過の個体としては大変良好な部類と判断される状態です。

    ロレックス ブレス 伸び

    ロレックス ブレス 三つ折れ

    欠けがひどく日本ロレックスでは交換必須とされたサファイヤガラスの拡大画像です。
    確かにガラス縁や赤丸で囲った部分に欠けがありますが、実用上問題無く、強度、防水面にも影響ない程度です。

    ロレックス ガラス 傷

    サブマリーナ ガラス 欠け

    湿気や紫外線の影響でトリチウムを使用した夜光塗料に剥離や割れが生じていた場合、当社では針の交換はせずに裏側から塗料の補修だけ行う事が多いのですが、日本ロレックスでは夜光にひび割れが生じていて交換必須と判断されたこのサブマリーナの針夜光塗料の状態は顕微鏡で視認しても大変良好なため、一切手を加えずにオーバーホールいたします。

    ロレックス 針 夜光

    日本ロレックスでは交換必須となるリューズとチューブも磨耗によるネジ込み不良や腐食も無く、次回5年後のオーバーホールまで気密保持可能で当社では現状交換不要と判断する状態でした。

    このお客様の場合、頻繁な手巻きやリューズ解除は行っておらず、リューズを腐食させるような汗の質でも無さそうなので、5年後以降も継続使用出来る可能性が高いと思われます。

    ただし、日本ロレックスで交換されるのは磨耗と腐食に対する耐久性が増したステンレス無垢製の新型リューズとなります。
    さらにリューズ単体での部品代が当社より安価なため、メーカーでのリューズ交換が決して無駄な作業とまではいえません。

    リューズとチューブを継続使用する場合、両部品に内蔵される各種パッキンおよびチューブの気密を確保するための充填材の再塗布チェックは必須となります。

    ロレックス リューズ 交換

    サブマリーナ リューズ チューブ

    最終的には消耗部品であるゼンマイとパッキンを交換し、数箇所の歯車軸の研磨/修正を行って総額¥36,000(税抜)でオーバーホールが完了しました。

    おそらく日本ロレックスでの見積もりの半額以下で済んだものと思われます。

    むしろ金額より重要なのが、交換が必要と判断された針についてです。
    日本ロレックスでの針交換後、文字盤夜光との色の差異にあまりにも違和感を感じるので何とかできないか?という相談が後を絶ちません。

    残念ながら元の針が日本ロレックスに回収されておりますので、一旦交換されてしまうと当社では打つ手が無く、日本ロレックスに依頼する前に当社を見つけていただいていれば、と思うと残念でなりません。

    これまで日本ロレックスで針交換必須と言われて当社へ依頼変更をした個体で、夜光の補修こそあれ、針交換まで行った事例はありません。

    しかしながら日本ロレックスが針以外にも様々な部品交換を推奨するのには、価格を吊り上げるといった安易なものではない妥当な理由もあるものと思われます。

    経年変化した夜光塗料が強い衝撃を受けた場合に剥離する恐れがあるなど、主に納品後の不具合の可能性を限りなく0%に近づけるためと思われますが、あくまで推測の域を出ない事もあり、これ以上の具体的な記述は控えさせていただきます。