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ロレックス エクスプローラーU オーバーホール 修理 (有)友輝  全国配送対応

ロレックス エクスプローラーURef.16570オーバーホール


  • ロレックス エクスプローラー2 16570

    エクスプローラーU/Ref.16570 白文字盤です。
    外観も非常に綺麗で丁寧な取り扱いをされていた事がうかがえ、前回日本ロレックスでのオーバーホールから4年強での停止とのことで、単純なゼンマイ切れが疑われる状況でした。

    しかし届いた時計を詳細に点検したところ、とてもそのような楽観的な状態ではない事が判明しました。
    いったい何が起きたのでしょうか??

    ロレックス オイル切れ

    お問い合わせの段階で”手巻きが出来なくなった”との申告があったのですが、単にゼンマイが切れて動作しなくなった状態をこのように表現するお客様は多いのです。

    10年以上オーバーホールしていない、または湿気の混入が疑われる状態ですと、単なるゼンマイ切れでは済まない事もあるのですが、今回のケースではその可能性は低いと判断しました。
    しかし現物が届いてリューズで手巻き操作をしてみると、本当の”手巻きが出来ない”状態でした。
    そのリューズ操作の感触から真っ先にチェックしたのがこの箇所です。下の歯車の2時付近にサビのような変色個所が確認できます。

    ロレックス 部品交換

    頭頂部のネジを緩めて中間歯車を外してみると、隠れていた個所の歯車が1歯欠けていました。

    欠けた歯車の先が挟まって時計の動作を止めてしまうことはあるものの、このような1歯程度の欠けですと、感触は多少変化しても手巻きが不可能とまではならない事がほとんどです。
    正確な見積金額を提示するためにも、もうすこし踏み込んで内部をチェックしてみることにしました。

    ロレックス cal.3185

    ”3185”という刻印の裏側に位置している歯車も手巻きに関連しています。
    この箇所も分解して裏側までチェックしたところ、そこの歯車も欠けておりました。

    ロレックス 手巻き 違和感

    手巻き機構に要する歯車は5つあるのですが、そのうち2つが欠けていた事になります。
    オイル切れの状態で無理に手巻きを行ったために歯車が欠けたのは容易に想像がつきますが、日本ロレックスでのオーバーホール後4年少々で湿気を混入させた形跡も無いのに、なぜオイル切れが発生したのか?という疑問が残ります

    実は時計を手に取った段階で既に”あっ、これは!”と悪い予感がしていました。
    それは”匂い”で、香水の残り香が感じ取れたのです。

    これまで香水と併用された時計で、明らかにオイルの蒸発/変質が促進されたと思われる時計をいくつも見てきました。
    特に裏蓋やリューズに近い位置にある自動巻き/手巻きに関する巻き上げ機構への影響が顕著に現れるようです。

    でもいったいなぜ香水がオイルの蒸発/変質を促進させるのでしょうか??

    ロレックス 香水

    まずは以下の記述について、あくまで当社の経験に基づく推測でしか無く、まだまだ原因に対する疑問は残っている事をお断りしておきます。

    ”香水は溶液としてアルコールが使用されており、手首付近に噴霧される事が多い”
    この点が時計の内部に影響を及ぼしているのではないかと推察しています。

    時計に使用されている防水/防湿用のパッキンはアルコールへの耐性が弱いとされています。
    そのため、時計を装着する左手首に噴霧された香水に含まれるアルコールが揮発してパッキンを侵し、その成分が微量ではあるものの時計内部に侵入した可能性が考えられます。

    アルコールは時計に注油されたオイルを分解しますので、パッキンで密閉されている裏蓋やリューズに近い箇所に存在する手巻き機構部のオイル切れが想定外の早さで進行したと推測しています。

    しかしながら今回のケースのように、香水の残り香が感じられる時計で明らかにオイル切れが早いと認められた個体も、20年で10例に満たないほどです。
    母体数としてはあまりに少なすぎるので、今後も引き続き更なる調査が必要となりそうです

    交換する頻度が非常に低い丸穴車と巻き上げ車を交換しても、最終的に総額59,950円でオーバーホール/部品交換が完了しました。

    香水による影響が疑われた時計の場合、お渡しの際には必ず以下のようにお伝えする事にしております
    ”もしこれまで香水等を使用されておりましたら、内部のオイル変質を促進させる事がございますので、出来る限り時計と同時に使用しない、もしくは時計と同じ側の手首には使用されないほうが無難です。”
    このようにお伝えしておかないと、また4〜5年で同じ症状が発生する恐れがあるのです。
    そうなった場合、お客様は”日本ロレックスも、この会社でも結局一緒か・・、もうロレックスを修理して使用するのは止めようかな”と思ってしまうのではないでしょうか。

    個々のお客様の使用状況を推察し、故障やトラブルをできる限り防ぐアドバイスをお伝えできるという点は、メーカーにはない当社独自の利点ではないかと、いささか自負しております。
    今後全く異常が発生しないまま、5年後にまたこのお客様からオーバーホールのご依頼をいただき、今回よりずっと安価な金額で作業が完了する事を切に願っております。

    ※価格は作業完了時点のものとなります。