世界一高いロレックス

| by admin
8月 31 2011 年

 

皆様お久しぶりです。先日、無事に帰国いたしました。

スイス旅行のついでに、せっかくだから時計関係も巡ってみようかな、程度のつもり
だったのですが、意外にも時計関係で充実した旅行となりました。

これから、雑誌などによくあるのとは一味違うスイス時計紀行をレポートしますよ!

スイスレポート最初の画像は、世界で一番高所にあると思われる時計の広告。

二枚目の画像は広告から90度右を撮影したんですが、これで大体どんな場所か想像
出来ますね。

この地点の標高はなんと3,880m!

空気が薄くてテンプが振り当たりしそうな高さです。(真空中ではチラねじ付きテンプが振り当たりします)

さすが天下のロレックスです。向かい側はヒラリー卿のEXⅠのダブル広告でした・・・

異業種交流

工具/設備機器 | by admin
8月 20 2011 年

前回のキリ改造工具の項で、押す力の配分が多いことを取り上げましたが、この”押す力7割、回す力3割”という法則は、ドライバーでネジを回す際にも共通しています。

一般的には鉄則となっているこの法則も、時計の世界では専門の技術解説書は勿論、ベテランから教わる際にも話題に出てくることはありません。

時計の場合、ねじの頭の溝にキズを付けるのはドライバーの形状の不備にあるのだとされ、ドライバーの形状/研ぎ方が非常に重要視されますが、この力の配分も大きな要素です。

その証拠に、経験の浅い技術者へ完璧に研いだドライバーを与えても、やはりネジの頭を傷めてしまうんですよ。

時計修理技術の世界は何よりも経験や勘が大事なのですが、そればかりに頼りすぎ、根本的な物理化学の原則を理解したり、他の分野から知識を得たりしている人があまりにも少ないと思います。

このドライバーの力加減は、クルマやバイクの修理の世界ですと基本的な常識となっていますが、時計の世界では経験として自然に身についていたとしても、知識として知っている人はどれくらいるのだろう?という感じです。

私の場合は、お客さんや趣味の分野での交流で知り合った方々が、様々な分野でのエキスパートである事が多く、そういった方々と交流することによって、材料や加工方法、ケミカル等々、時計修理に応用できる様々な知識を得る事が出来ています。

ドライバーの力配分のように、異業種の方々には常識でも、時計の世界では全く知られていないことが多々あります。

これから、徐々にそういったものも紹介してゆきたいと思っています。

ピンセット

工具/設備機器 | by admin
8月 20 2011 年

前回の”キズを付けない”という記事を見て、先の固くないピンセットを使えばよいのでは、と思った人も多いでしょう。

こんなピンセットがあります。

上の白いのは、先端が針押しやガラス押し込みコマでおなじみの”デルリン”という樹脂製で、下のはプリント基板に使われているベークライト製のピンセットです。

私が今持っているのはこの2種ですが、その他にも昔からある真鍮製をはじめとして、現在はセラミック、カーボン等々様々な材質のピンセットがあります。

こういったものを使用すれば、時計部品にキズが付くのを防ぐことができます。

ただ、こういったピンセットって、シャープに研ぐと先端の”合い”がイマイチになって部品がつかみにくくなったり、強度が不足したりするので、バネのような着脱の際にテンションをかける必要のある部品を扱うのにあまり向いているとはいえないんですよ。

なのでデルリンピンセットの先を研いだものは、鏡面+メッキの針を掴むときに、ベークライトのほうは主に仕上げの施された”受け”を掴む際に使用しています。

バネ性のある部品の場合は、画像のような先端を2液エポキシで固めた柳の棒を使用しています。

これでバネのアームを外せば、アーム本体は勿論、地板にキズを付ける事はありません。
さらに、薄手のビニールを切ったものを上に被せてから着脱すれば、キズと部品が飛んでいくのを同時に防止できます。

鉄製ピンセットでも、このビニール作戦でほとんどの場合キズを防ぐことができます。

エポキシで固めるのは、先端が崩れて木屑が飛び散るのを防ぐためです。

普通の楊枝でもいいのですが、先端が崩れやすいんですよね。
楊枝と竹串の中間の粘りがあって、先端を削りやすい柳製の”掃除棒”が最も使いやすいです。
もしくはちょっとお高い料理に付いてくる、柳製の割り箸を削ってもOKです。

今はわかりませんが、一昔前に”柳楊枝”という商品名なのに、材質は一般の楊枝と変わらないパチもんがありましたのでご注意ください。

そうそう、余談ですが、東京で仕事してる一部の年配の職人は、この柳の箸から削った掃除木を”ゲイシャ”なんて言ったりするようです。

落語の小噺系の駄洒落の言葉かけなんですが、わかりますか??

三種の神器(?)

工具/設備機器 | by admin
8月 20 2011 年

 

私がヒゲゼンマイ修正に使用するピンセット3種です。

売っている状態ほぼそのままのものは、一番下のものだけで、後の2本は、隙間の狭いヒゲゼンマイ(主にヴィンテージ女性用)に使用するために先端を極めて細く削ったり、顕微鏡での作業で視野を確保するために、曲げ加工を施しています。

また、この3本は先端の形状だけでなく、閉じる際に要する力(いわゆる”コシ”)も大きく異なっており作業の内容や、ヒゲゼンマイの弾性によって使い分けます。

回復処置

時計業界に物申す | by admin
8月 19 2011 年

 

 

すっかり尻切れトンボになってしまった”香箱キズ”の記事ですが、
「回復処置編」忘れずに書きますよ。

まず、深いキズを根本的に取り去るのは難しいということをご理解ください。

それにはキズが無くなるまで表面を研磨し、仕上げ模様を施すことになりますが、
研磨=肉厚が薄くなることであり、あまり好ましい処置でないことと、ロレックスの
香箱のような仕上げ模様は、旋盤に大変高価なアタッチメントを取り付けて行う必要が
あり、容易に行うことが出来ないのです。

そこで、リューターにワイヤーブラシを取り付け、仕上げ目に沿って、”ごく軽く”
当てるようにして、”キズを目立たなく”するようにします。

1枚目と3枚目の画像が”ワイヤーブラシ使用前・使用後”になりますが、若干の違いが
お分かりになりますでしょうか?
あくまで若干、ですよ・・・

画像のように、力加減と当てる方向がわかっていれば、かなり使い込んだスチールブラシ
が最適ですが、慣れないうちは真鍮製のワイヤーブラシを使用するのが賢明でしょう。

さて、この度技術志向で無い方々にも喜んでもらえそうなネタ(修理品)が入って
きました。
週一ペースがやっとになりそうですが、私にとっても興味深い時計ですので、内容の
濃い記事になりそうです。
ご期待ください!

判りやすく捻ってみました

ロレックス | by admin
8月 19 2011 年

 

ヒゲゼンマイの断面は円形ではなく薄い板状のバネになっていて、それを
コイルにして巻いてあります。

顕微鏡を駆使しても、ヒゲゼンマイを修正している瞬間は捉えきれないので、
”ねじる”という修正方法を、細長く切った紙テープで再現してみました。

判りやすく見せるために、かなり極端にねじってみましたが、方法としては、
ほとんどこの”まんま”です。

修正済

ロレックス | by admin
8月 19 2011 年

無事修正できました♪

でも、このcal.2135を含む現行ロレックスは、この後テンプの
組み込みに難所が待ち受けてるんですよ・・・

ロレックス独特の設計で、高精度を達成するためには不可欠な
構造なのですが、一度テンプを取り外すと面倒な事になるんです。

このあたりの解説は、また回をあらためて!

いよいよ修正

ロレックス | by admin
8月 19 2011 年

 

本のヒゲゼンマイ専用ピンセットを左右それぞれの手で持ち、赤丸と×印部分を
挟みます。

そのまま、右手のピンセットだけ赤丸部分を支点として、矢印方向(内側)へ捻ります。

このように、2本のピンセットを使用すると、ヒゲゼンマイを”捻る”ことが可能に
なります。

逆説的な見方をすると、正常な状態から”捻って変形させてしまう”恐れもあるのです。

これが、水平方向での変形の場合、私が2本のピンセットで修正する事を避ける理由でも
あります。

次回、”修正後”の画像を掲載します。

国会じゃありませんが、”捩れ”てます

ロレックス | by admin
8月 19 2011 年

手持ちの顕微鏡での最大倍率(40倍)で撮影した、変形部分の拡大画像です。

よく見ると、外側に”ねじれて”変形しているのがお分かりになりますでしょうか?
(クリックでさらに倍率upしてください)

50~60年前のブローバ時計学校のテキストや、スイス/フランスの技術解説書籍でも、
修正を要するヒゲゼンマイの実例として紹介されているのは、”くの字状”=水平方向
に変形した場合の修正方法ばかりです。

しかし、実際にはこのように捩れて変形する場合も多いのが実情です。

次回、どこをどうやって修正するのか、静止画像と文章だけで何とか判りやすく
解説する方法を考えあぐねているところでございます。

しばしお待ち下さい…

修正ポイント2

ロレックス | by admin
8月 19 2011 年

 

前の画像で、この部分からヒゲゼンマイが外側方向へ変形してしまっているのが確認できましたね。

ヒゲゼンマイが水平方向で変形している場合、○の部分をヒゲ専用ピンセットを使って左手でつまみ、(勿論、強くつまむとそこでさらに変形しますよ!)右手に持った極細ピンで、×印をつけた部分のヒゲゼンマイ外側側面を、矢印方向へ押してやります。

右手もヒゲ専用ピンセットでつまむという方法もありますが、微妙な力加減が難しく、曲げすぎてしまうこともあるので、私はヒゲゼンマイの弾性を利用しながら、ピンで押しつつ、徐々に元の形に修正するやり方を採っています。

が、しかし・・・

この画像の事例の場合、上記のような一般的な水平方向変形に対応する修正をしてしまうと、変形度合がさらに大きくなり、「ヒゲゼンマイ・スパイラル」に陥る原因となります。

次回、正解の修正方法の解説です。