Archive for 2011 年 8 月

裏蓋今昔

時計業界に物申す | by admin
8月 17 2011 年

デイトジャスト番外編として、Ref.1601の裏蓋/ケースについての知識と、それに関連
した、皆様お待ちかねの業界ウラ話をひとつ。

このRef.1601、ハック(秒針停止機能)付きムーブメントに変更されるのと同時期の
1971年前後に、ケースと裏蓋が変更されます。
どういった意図による変更かは判らないのですが、ねじ込みピッチが異なるらしく、
前期型のケースに後期型の裏蓋は、ねじ込めません。

また、パッキンが入る部分のスペースも、画像のように右の後期型が幅広で、後期型のパッキンを前期型に使用するとパッキンがはみ出します。(ということは防水性能の向上を狙った変更なのかも)

こんなことがありました。

この旧タイプ、既に日本ロレックスでOHは受けないようなのですが、例外はどんな世界
にもあるものです。

私の知人で、ご両親はもちろん、お祖父さんの代からロレックスを新品でいくつも購入
していて、その頃から日本ロレックスの前身であるリーベルマン商会へOHを依頼していたという方がおります。

この方が、先日ベゼルの欠損してしまったRef.1625サンダーバードのOHを依頼した
ところ、何の問題も無く受け付けてもらい、新品のベゼル(!)も装着してもらえた
そうです。

部品の流出を防ぐためなのか、日本ロレックスは欠損部品の補充に対して、難色を示す場合もあると言う事を耳にします。

でも、この方のように家族皆で正規品を購入し、昔から定期的にメンテナンスを施して
いたような場合はその限りではないのでしょう。

メーカーの対応には批判的になりがちな私ですが、新型も継続して購入してくれるような昔からのお得意さんに対して、限られた在庫部品を確保しておく、というのは至極当然であるように思えます。

話を戻しまして、この知人が初期型1601をOHに出したところ、裏蓋パッキンが後期型対応の物しかないらしく、パッキンがはみ出た状態で納品されました。
「現在は1601用として、このパッキンしか供給されてません、防水性は確保されていますので・・・」とのことでしたが、どうにもしっくりこないと言うので、私のもとへ相談に
来られました。

汎用の各サイズ揃ったパッキンの中から、若干幅の狭いものを使用したら、はみ出すことなく裏蓋を締める事が出来、防水性も確保できたのですが、”ロレックスの技術者も、個人の裁量で社外品のパッキンを使用したりする融通を利かすことが出来ないのかな、大きな会社というのも面倒かも・・”と思いました。

機械交換師

時計業界に物申す | by admin
8月 17 2011 年

とある有名代理店では、オーバーホールと称する機械交換が行われている実態の話題が出ましたので、ここらで真実を一筆。

一昔前まで、スイス製時計は日本の会社がメーカーと代理店契約を結び、”正規品”
として輸入していました。
現在、ほとんどのスイス製有名ブランドはメーカー直営の日本法人が輸入しています。
このあたりは、国産品保護措置の廃止や不均衡輸出入の是正などと関連があります。

それはさておき、この日本法人のトップに就任するのは、本国から任命された、経済や
会社経営に精通した外国人である場合がほとんどです。

彼らが、長期的な展望で時計作りに情熱を傾けているかというと、残念ながらそうでは
無いようです。
というのも、10年、20年とその会社に在籍することは稀だからです。

本国から任命され、長くとも7~8年以内で結果(数字)を残す事を求められ、
本人達も、結果を手土産に本国へ栄転することを希望しています。

当然のことながら、単独では不採算部門であるアフターサービス部にも最大限の経営
効率が求められ、分解/洗浄/組み立てなどせずに、機械交換だけをするように、との
通達がなされるのです。

シリアルNo.が関ってくるクロノメーター認定ムーブは”仕方なく”オーバーホール
してるみたいですが・・

決まったモデルの機械交換なら、経験が浅く賃金も安い若年技術者でまかなえます。

これでは将来への展望も抱けず、一人前になるのに10年以上かかる時計修理師育成は無理ですよ。

そんなに額面の数字が好きなら、モノづくりなどせずに、株や先物、為替取引で利益を
得ればいいのに、と思ってしまうのですが、スイス製機械式時計はローリスク、
ミドルリターンの商品と捉えられているようです。

こんなスイス時計界へ、正攻法で(この場合モノ造り)、いつか反旗を翻したいという
情念を実現するべく、常日頃考えている所存です。

はぁぁぁ~・・・、イヤな世の中だなぁ~

最後に

オメガ | by admin
8月 17 2011 年

コメントを見ますと、このシーマスター300がどのような経緯を経て世の中に出てきたかは、皆さん大体の推測が出来ているみたいですね。

なので、私が「真実はこうだ!」みたいに語ると、色々と面倒な事もありそうなので、以下の事実だけ記して、このシーマスターについては最終回とします。

●ムーブメントがクォーツ、もしくは中国製の機械式ムーブメントを搭載していて、外装がそっくりの時計が1~2万円で販売されている。
もちろん、文字盤には別ブランドのロゴが入ってますけど。

●”スーパーコピー”と呼ばれるブランド時計のニセモノや、そっくりさんのレプリカ時計といったものを見てもわかるように、工作精度が高いケースやブレスを新規作成することは、ある程度のコストさえかければ一見オリジナルと区別がつかないものも作成可能になってきています。

●文字盤は後からいかようにもリダンできる事は周知の事実です。

●裏蓋には後から文字を掘り込んだり彫刻が可能なのは、記念品の時計などでそういった
サービスがあることからも、それほど難しいことではありません。

●ムーブメントの新規作成は昔も今も大変な設備投資を伴いますが、1960年代オメガの代表的ムーブメントであるcal.550、560系統はシーマスターやジュネーブなどにも搭載されていて、比較的安価に入手が可能です。

●それらのムーブメントは防水性が売りのシーマスターに搭載されていたせいか、水気に
対して無頓着に扱われていたものも多かったらしく、水没してサビだらけとなったジャンク品をタダ同然で買い取り後、サビ取りしまくって強引に動作するようにしてある個体をよく見かけます。

●針のハカマ(穴)のサイズは、適合するムーブメントに対してサイズが厳密に決まっており、異なるムーブメントに針だけ合わせるのは非常に難しいものです。
仮に大き目の針から削って、装着は可能だったとしても、手作業でキレイに仕上げるのは至難の技です。
ただ、これも相当のコストを掛ければ新規に作成する事も可能ですが。

以下、さらに余談ですので読み流してください。

ずっと幻のように扱われてきたスピードマスターのファーストモデルが、復刻版が登場したとたん市場にいくつも出てきたり、同じく生産数が極端に少なかったはずのRef.1655エクスプローラーⅡが、”全くダメージの無い新品同様な”状態で驚くような高値をつけて販売されていたり等々、世の中には不可思議なことが多々あります。

そういえば、エクスプローラーⅡと同じムーブメントを搭載しているRef.1675のGMTマスターは、最近すっかり見かけなくなりました。

スポーツモデルの看板モデルとして、当時は比較的生産数が多かったはずなのですが、一体どこいったんでしょうねぇ・・・・

それでは、皆様色々想像して楽しんでくださいね!

劣化具合

オメガ | by admin
8月 17 2011 年

比較的状態の良いシーマスターが修理で入ってきましたので、比較の為に同じアングルで撮影してみました。

パッと見は適合するムーブメントが入っていて、そこそこ見栄えのする状態にも見えたシーマスター300(?)ですが、細かい部分を見ると違いが一目瞭然ですね。

前回の写真を見て、”ジェダイの復讐”では一作目に比べて、すっかり劣化してしまったレイア姫を思い出しました。

最初に見る部分

オメガ | by admin
8月 17 2011 年

 

ムーブメント(特に’60年代のオメガ)をチェックする際に真っ先に見るのが、緩急針、角穴車、機留めネジ部分です。
何故にこの3箇所かというと、スチールで出来ている部品だからです。
その理由は次回でお伝えする事にしますので、まずは緩急針部分を拡大して見てみましょう。

・・・・

角穴車近辺も想像通りの状態です。

”何が起きるとこういう状態になるのか”それを把握するのが、この時計の出自を推し量る目安となります。

次回はそのあたりの解説を。

正真正銘のオメガ

オメガ | by admin
8月 17 2011 年

オメガです。

1960年代、本物のcal.550です!!

様々な想像をさせてしまいましたが、意外な結末でスイマセン・・

って、それで終わるわけないじゃないですか。
いよいよ次回は最終章に突入です。

This is a pen!

オメガ | by admin
8月 17 2011 年

 

いよいよ裏蓋を空けます。

オメガの裏蓋の内側にはRef.ナンバーなどが刻印されているのですが、意外にも結構キレイな刻印が打たれていました。

”見えない部分も手を抜かない”という、スイス高級時計の思想がシルクロードを介して伝わっていたのかもしれません。

ん??

二段目の”PLAQUE OR G 40MICRONS”って、「40ミクロン金メッキ」って意味じゃなかったっけ???

すかさず166.002という品番を調べてみると、どうやら1960年代のオメガ・ジュネーブの金メッキタイプのようです。

荒井注並みの英語力しか無い人が、テキトーに丸写ししたんだろうなぁ・・・

その昔、中国製花火の説明書きで「どらかせんに火をつけると、ぐらぐらとまはりだします」とあった事を思い出し、なんだか懐かしい気分に浸ることができました。

唯一褒められる点(??)

オメガ | by admin
8月 17 2011 年

軍用の証(?)である裏蓋の刻印です。

拡大画像でもわかるように、とても綺麗に刻印されていますね。
なかなか良い仕上がりです♪

でも、こういった軍用の識別用刻印って、時計メーカーから納入された後、軍の手によって刻印される事が多いので、加工精度の面から見ると、やや粗い刻印であることも多く、こんなにクッキリ綺麗に文字が出ているのは珍しいんですけどね・・・

10年以上前にOHしたものは、けっこう粗い刻印でした。

2タイプ存在するのかなぁ(笑)

見えなきゃ・・・良くない!

オメガ | by admin
8月 17 2011 年

同じアングルから画像の赤丸部分、ベゼルの凹凸部分をクローズアップしてみましょう。

う~ん、何とも粗い仕上げです。

ここまで跡を残しておいてくれると、小型の丸鋸状のカッターを回転させて、この凹凸を加工しているというのが良くわかります。
大人の社会見学です。

この部分は、販売する際の画像には写りにくい箇所ですからね。

この時計の一貫したコンセプトである「見えなければいい」という思想は、見渡して周りに誰もいなければ、散歩中の犬のふんを回収しないような人達に受け入れられるのかもしれません。

買うんじゃなかった・・・と思わせるシーマスター

オメガ | by admin
8月 17 2011 年

ケースを研磨して仕上げる際、結構難しいのがラグのヘアラインと鏡面部分の境目なのですが、画像でもわかるように、ここは結構頑張っています。

しかし、その先に目を向けると、やっぱり馬脚を現しますね。

ベゼルの下部分、ケースと接する箇所ですが、サビ落としをしたかのように凸凹になっています。(2枚目画像赤丸部)

さらに、ケースのほうにはヤスリを滑らして削り過ぎてしまったような跡が見えます。

このシーマスター、買ってからがっかりさせられるという点では、雑誌の袋とじページと
相通ずるものがあります。