Archive for 2011 年 8 月

ロレックス サブマリーナ 赤サブ その2

ロレックス | by admin
8月 19 2011 年

アンティーク時計専門店で勤務していた頃に、Ref.1680でSUBMARINERの部分が赤い、
”赤サブ”なるものを4~5個見ましたが、それぞれに文字の字体、仕上げの差異が
あり、どれも画像とは異なるタイプだったように記憶しています。

まず、これだけくっきりと文字が鮮明に盛り上がっておらず、さらには赤の発色が
これほど鮮やかではありませんでした。

他の部分での文字盤の劣化がほとんど無いのにもかかわらず、です。

私はロレックスから認定された鑑定人ではありませんので、「この画像の文字盤こそ
本物の赤サブだ」なる、アンティークショップの店主の方がよく仰っているような
ことは断言できません。

ただ、ここまで紹介したのには、それなりの理由があるのです。

ロレックス サブマリーナ 赤サブ その1

ロレックス | by admin
8月 19 2011 年

 

’70年台初頭に、ごく僅かな数量のみが生産されたと云われている、文字盤の
ペットネーム部分が赤い文字でプリントされたロレックス・サブマリーナ
Ref.1680、通称”赤サブ”の画像です。

もし赤サブをお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひ見比べてください。

同じに見えますか?

それとも…!?

悪いのは誰だ!

時計業界に物申す | by admin
8月 17 2011 年

とある地方のお客様から、ロレックスのオーバーホール依頼がありました。

弊社では、遠方のお客様から時計を送っていただくにあたって、梱包配送キットを郵送し、送料着払い(弊社負担)の方法を採用しておりますので、この方法で送付していただきました。

届いた時計の外装を点検した段階でほぼ確信いたしましたが、念のため裏蓋を開けると、これまで私が見た事のないムーブメントが内蔵されていました。

しかし、真贋に関して私が断定する事は決していたしません。

どう考えてもロレックスで製造されたとは思えないものであったとしても、私はロレックス社から認定された鑑定士ではありませんので、それが”ロレックスで製造されていない”という事を証明することが出来ないのです。

お客様には”当社では修理お預かりできない時計”である旨を説明し、送料着払いで返送する事を了承していただきましたが、配送キットの送料、受け取りの際の着払い送料はこちらで負担した形となってしまい、何とも後味の悪い結果となりました。

お客様には、問い合わせの段階でおおよその修理金額を伝えていますので、その金額を支払っても修理したいと送ってこられたという事は、やはり”知らなかった”のだと思います。

修理をお断りするにあたって、お客様と電話で話したのですが、しばらくは事情が飲み込めずに戸惑っておられ、最初から”やっぱりな”という反応ではなかった事からも、ご存じなかったのでしょう。

ですので、この後味の悪さは、こういった時計を生み出した者達にぶつける事にいたしました。

”自分が買ってシャレで装着するから”といった理由で、海外でこういった時計を購入する方も多いと聞いています。

しかし、第3者の手に渡るうち、例え悪意が伴っていなかったとしても、どこかで今回のように困ってしまう人が生まれかねないのです。

また、こういった時計の代金は、概して反社会的な組織や活動の資金源と成り得る事が多いのも、購入者はほとんど意識されていないことと思います。

このブログを読んでいらっしゃる方にはいないと思いますが、そういった時計を所有されている方が居られましたら、あなたの決断でその時計を処分し、悪循環を断ち切ってくださいね。

めっきが剥げる

時計業界に物申す | by admin
8月 17 2011 年

今日は来店時間までお約束していただいたお客様が、閉店時間まで待ってもいらっしゃらず、ちょっと寂しい気分で帰宅しました。

わが社のHPを「大変信頼性が高いですね」と褒めてくださったような方ですので、きっと、急な用事で携帯電話の電波も届かないような場所へ行かなくちゃならなくなったんだろうな・・・うん、きっとそうに違いない、そう思うことにしようw

それはさておき、最近こんな本を読みました。
背表紙付近に見える、公共機関の分類用ラベルには突っ込まないで下さい。

日刊工業新聞社刊:「トコトンやさしい 機能めっきの本」です。

中でも、”硬い表面を得るめっき”と”磨耗しにくい表面を得るためのめっき”の項に興味をそそられました。

以前から、バルジュー7750の部品表面は鈍い光沢仕上げがされており、バネ性を保ちつつも長年の使用でも摺動部分が磨耗しないことから、1960年以前のアンティークなクロノとは異なる表面処理がされているのものと想像していましたが、どうやらその謎がこの本によって解けました。

硬い表面と磨耗しにくいを得るめっきは、”硬質クロムめっき”とのこと。
鈍い光沢が出るのがこのめっきの特長だそうで、7750のレバーやバネの表面には、このめっきがかけられている事が想像されます。

また、”表面に潤滑性を持たせるためのめっき”のところを読んだ際には、極力摩擦を少なくして手巻きの際に引っかからずに空回りさせる必要のある、ロレックスの赤い切替車に採用されているのではなかろうかと、あれこれ想像をめぐらす事が出来ました。

このあたりは、私もこれからまだまだ知識の蓄積や検証が必要です。

材料工学や生産技術に明るい方からは、「えっ!?時計屋さんって、そんな基本的なめっきの知識も無いの!?」と呆れられてしまうかもしれませんね。

こんな基礎的な事も知らず、”アンティーク時計はコストを度外視した材質を使っていたので、現行品より耐磨耗性に優れる”という雑誌の記事を、調味料の小袋に記されてる「こちら側のどこからでも切れます」という楽観的な文言と同じように、素直に信じた自分が恥ずかしくなりました・・・

”めっきが剥げちゃいましたね”と笑われないようになりたいものです。

勇退と引き際

時計業界に物申す | by admin
8月 17 2011 年

 

画像はスピードマスターオートマ3510.50のブレス取り付け部分ですが、おかしな点があるのがわかりますでしょうか?

そうです、バネ棒を取り外す際に、縮める(狭める)ための工具を引っ掛ける段が無いタイプのバネ棒が装着されているんです。

これは10年前までのロレックスに代表される、ラグの外側までバネ棒用の穴が貫通しているタイプのケースにしか使用してはならないバネ棒です。

二枚目の画像でいうと、上が段付き、下が貫通タイプです。

で、これに何故憤慨しているかと申しますと、この貫通タイプを装着されると、ラグに穴が開いていないわけですからバネ棒を縮める事が出来ず、ブレスの取り外しが基本的に不可能になるんです!

この時計のオーナーさんがあまり深く考えずに、手許にあるバネ棒をご自分で装着してしまったのでしたら、まぁ、しょうがないということで、無理に取り外さずに作業するのですが、この貫通バネ棒、ロレックス以外にも1970年代以前の時計で多く使用されていた為、市井の古い時計店などに部品在庫として残っている事も多く、そこで装着されてしまう事が少なくないようなのです。

後から外せない事を知っていて、手元の在庫部品で安直に済ませたのだとしたら悪徳と言っても良いでしょうし、それすら知らずに、装着するのは簡単だからと、無思慮に装着していたとしたら、基本的な知識に問題があると言えます。

様々な形状のケース/ブレスを採用した時計が発売されている昨今、私だって全てのパターンを把握しているとは言いませんが、こういった基本的な認識や知識に欠けた時計店には、今すぐ看板を降ろしてもらいたいものです。

”勇退”や”引き際”という言葉があります。
先達の方々に対して生意気な事を言うようですが、感覚が衰えてきたら、お客様に迷惑をかけない様、後進に道を譲ると言う事も必要なのではないかと思います。

しかし、私の知っている年配の時計屋の店主さんの中には、齢70を超えても技術の交流会や勉強会に積極的に参加して、貪欲に知識を吸収し、私などまだまだ及ばない、尊敬すべき先達もいらっしゃる事を併せて明記しておきます。

ニコラス爺さん、安らかに・・

時計業界に物申す | by admin
8月 17 2011 年

近江神宮の境内には、天智天皇が作らせた漏刻台に倣った水時計が設置されています。

台座部分の銘盤には、この水時計が、1993年まで100年間に渡って日本におけるオメガの輸入代理店として、オメガのブランド力を国内に示したシイベルへグナー社から贈られたことが記されています。

ご存知のように、現在オメガの輸入/販売は、直営の日本法人であるスウォッチグループジャパンとなっています。

ここで私が感じた事は、「果たしてスウォッチグループはこういった活動をしているのだろうか?」という事です。

多くの人の目に触れる銘盤をつけて物を贈るのは、宣伝や節税といった意味合いも無いとはいえないでしょう。

しかし、宣伝効果といっても僅かなものでしょうし、オメガの販売に関して近江神宮が便宜を図るといったことも考えにくいのです。

これはやはり、日本の時計文化を語る上で欠かせない、近江神宮に対する敬意を表したものといえるのではないでしょうか。

外資系の商社とはいえ、幕末に日本で創設され、日本人の文化や習慣に親しみを持ち、日本に溶け込む努力をしていたシイベルヘグナーという企業の姿勢がこういったところから見て取れます。

Wikipediaで”日本シイベルへグナー”と検索してみてください。

シイベルに在籍していた年配の方、現在スウォッチにいる者、両方の知人がおりまして、その内情を耳にすることがありますが、時代の違いがあるとはいえ両社の企業姿勢には相当な違いがあると思います。

リーマン・ショック前まで、”オメガ 修理”と検索しても、オメガショップのHPにはなかなかたどり着けず、手間がかかって利幅も薄い修理はあまり積極的ではないのかとさえ思えました。

最近は新品の販売がさっぱりなせいか、かなり上位に表示されるようですが・・

これは個人的な感想ですが、銀座のハイエックセンター(スウォッチグルーブジャパン日本本社)の建物は、デザイン/見た目重視のせいかエレベーターの数が少なく、昇降に時間がかかってしょうがありません。

おそらく社内の基準時計は漏刻なんじゃなかろうかと・・・

はい、毒吐くのはこれくらいにして、次回からはGMTにもどります。

近江神宮時計宝物館

時計業界に物申す | by admin
8月 17 2011 年

 

 

先日の連休を利用して、滋賀県の近江神宮へ行ってきました。

このブログでは、よくありがちな”~へ行って来ました”&”~食べました”という記事は避け、原則として時計関係に限定しようと思っておりますので、近江神宮も時計とは縁の深い神社です。

近江神宮は天智天皇を祀る神社でして、日本に於ける時計の歴史を語る際には絶対外すことの出来ない場所なのですよ。

天智天皇と時計の関係は、2番目の画像をご覧くださいね。

そんなわけで、神社の境内には時計宝物館(博物館)があります。
規模は小さいものの、天体観測用の高精度和時計や、旧日本海軍の航空機用クロックなど、非常に珍しいものも展示されています。

旧軍のコクピットクロックで現存しているものは、ほとんど陸軍用で、海軍仕様のものは大変珍しいのです。

館内は撮影禁止だったのが残念・・
展示物に関心のある方は、ぜひ現地まで足をお運びください。

ここまでですと、よくある旅紀行ブログなのですが、たまに毒を吐く記事がウリの当ブログがここで終わるわけがありません。

あ、ちなみに近江神宮さんに対して毒づくわけではありませんよ!

続きは次回に。

仕込みと熟成

時計業界に物申す | by admin
8月 17 2011 年

この度の金融ショックで今後は鳴りを潜めるかと思われますが、この5~6年の間という
もの、老舗有名ブランドが過去に特注で製造した時計が、海外の有名オークションで
数億円超といった驚くべき金額で落札されていたのを皆様ご存知かと思います。

「スゴイな~、落札したのはドバイの富豪とか欧米の貴族階級のコレクターとか!?
あるところにはあるんだな~」と思われた方、あなたは心の綺麗ないい人です!

私はいつも物事を斜めから見てるような心の汚れた輩ですので、ちょっとうがった見方をしちゃいました。

以下、いち時計修理屋ごときの戯言ですので、聞き流してくださいね。

驚くべき高額で落札されると、当然そのニュースはあらゆる媒体で全世界へ発信され
ます。
そのブランドの名は、これまで時計にあまり関心が無かった層にまで”過去の名品が
そんな高額で取引されるような名門ブランドなのか”という意識を植え付けることは
想像に難くありません。

これ、落札者はその老舗有名ブランドの会社そのものなんです。
全世界のあらゆるメディアへの宣伝費と考えれば数億円は安いもんですよ。

で、その数億円の時計をどうするか?

自社のミュージアムに展示ですよ。

当然目玉展示になりますし、何年後かに、その時計に雰囲気の似た時計を新製品として発売するのです。

その希少品を探し出して、さらにはオークションで最後まで競い合う相手もそのメーカー
自身が仕込んだのかどうか、それは判りませんよ。そこまで憶測で物事を語ってはいけません。

私はこの事実を聞いたとき、店内BGMに「ドナドナ」が流れているマクドナルドに入って
しまったかの様な陰鬱な気分になりました。

えっ!?それはどこのメーカーかって??

まぁ、それは敢えて言いませんよ。

さ、次からは旧き良きパテックを褒め称える記事に戻るとしましょう♪

あ、このタイミングで記事にしたというのは、たまたまですよ。本当にたまたま(爆)

やっちまった!後の対策

時計業界に物申す | by admin
8月 17 2011 年

対策としては、とどのつまり ”分解前には、いつ如何なるときでもコハゼを解除して
ゼンマイをほどく”ってことになるんですが、このブログでは他では見られない内容が
売りですので、やっちまった場合どうするか、についても書くことにしましょう。

まずは全分解(OH)の際、いきなり角穴車、ゼンマイ部の受けを外すのではなく、
テンプ、アンクルの順に外すセオリーを遵守してください。

というのも、分解のマニュアルや時計修理について解説された本には書いてないん
ですが、ゼンマイをほどいたつもりでも、オイルの固着やサビなどにより香箱芯の
回転が妨げられており、ゼンマイがほどけ切っていないことがあるんですよね。

この固着した状態で香箱周辺を分解すると、角穴車や香箱がいきなり勢い良く回転して、ピンセットやドライバーの先端で表面に円形キズが刻み込まれるのです。

テンプ受け→アンクルの順に外す事を守れば、最悪ゼンマイを戻し忘れていても部品に醜いキズをつけないで済みますが、ここからが肝心です。

アンクルを外したとたん、ゼンマイがほどけていなくて輪列が”キュイ~ン”とターボが
かかったような高周波音を発して高速回転を始めたら、4番車かガンギにロディコを挟んで回転を止めてやってください。
香箱や2番車はトルクが強いので、ロディコや指では止められません。

手に持ったドライバーやピンセットでガンギや4番車を掴むのが最も早いのですが、
ヘタするとホゾを折ります。

ロディコならそういった可能性が極めて少なくなります。

ロディコをストッパーにしておき、あらためてコハゼを解除し、リューズを巻き上げと
逆に回転させて完全にゼンマイをほどいてやります。

いつもロディコをすぐに見つかる位置に置いておくことが肝心です。

壊すのは時計屋です!

時計業界に物申す | by admin
8月 17 2011 年

香箱表面に付いた、まるでコンパスでケガいたような真円のキズ、何だかわかりますか?

これは分解の際、ゼンマイをほどかないで受け板を外してしまい、受けが外れた瞬間、
ゼンマイトルクで香箱だけがコマのように急回転し、2番車や外した受けの淵と接触して付いた傷です。

校則の厳しい中~高校時代を過ごした真面目クンが大学に入学した途端、抑圧されて
いたゼンマイトルクのごとき鬱憤が爆発し、心も外見も傷ついてしまったかのような、
ほどけまくった”大学デビュー”な学生生活を送るパターンと同じようなものですかね。

ホゾのサビや異物の噛み込みで歯車輪列が回転しない状態=”ザラ止まり”の場合に
このミスを犯しがちです。

あ、このキズ付けたの私じゃありませんよ。

受けのネジが笑っていることや、自動巻きユニットを取り付ける際に一発で位置決め
出来なかった為に付いたと思われる、香箱下にある穴石周辺のキズなどで、過去に雑な作業者によって扱われたのがうかがえます。

次回、”やってしまった”場合の対策や予防方法を紹介します。