私がヒゲゼンマイ修正に使用するピンセット3種です。
売っている状態ほぼそのままのものは、一番下のものだけで、後の2本は、隙間の狭いヒゲゼンマイ(主にヴィンテージ女性用)に使用するために先端を極めて細く削ったり、顕微鏡での作業で視野を確保するために、曲げ加工を施しています。
また、この3本は先端の形状だけでなく、閉じる際に要する力(いわゆる”コシ”)も大きく異なっており作業の内容や、ヒゲゼンマイの弾性によって使い分けます。
私がヒゲゼンマイ修正に使用するピンセット3種です。
売っている状態ほぼそのままのものは、一番下のものだけで、後の2本は、隙間の狭いヒゲゼンマイ(主にヴィンテージ女性用)に使用するために先端を極めて細く削ったり、顕微鏡での作業で視野を確保するために、曲げ加工を施しています。
また、この3本は先端の形状だけでなく、閉じる際に要する力(いわゆる”コシ”)も大きく異なっており作業の内容や、ヒゲゼンマイの弾性によって使い分けます。
すっかり尻切れトンボになってしまった”香箱キズ”の記事ですが、
「回復処置編」忘れずに書きますよ。
まず、深いキズを根本的に取り去るのは難しいということをご理解ください。
それにはキズが無くなるまで表面を研磨し、仕上げ模様を施すことになりますが、
研磨=肉厚が薄くなることであり、あまり好ましい処置でないことと、ロレックスの
香箱のような仕上げ模様は、旋盤に大変高価なアタッチメントを取り付けて行う必要が
あり、容易に行うことが出来ないのです。
そこで、リューターにワイヤーブラシを取り付け、仕上げ目に沿って、”ごく軽く”
当てるようにして、”キズを目立たなく”するようにします。
1枚目と3枚目の画像が”ワイヤーブラシ使用前・使用後”になりますが、若干の違いが
お分かりになりますでしょうか?
あくまで若干、ですよ・・・
画像のように、力加減と当てる方向がわかっていれば、かなり使い込んだスチールブラシ
が最適ですが、慣れないうちは真鍮製のワイヤーブラシを使用するのが賢明でしょう。
さて、この度技術志向で無い方々にも喜んでもらえそうなネタ(修理品)が入って
きました。
週一ペースがやっとになりそうですが、私にとっても興味深い時計ですので、内容の
濃い記事になりそうです。
ご期待ください!
手持ちの顕微鏡での最大倍率(40倍)で撮影した、変形部分の拡大画像です。
よく見ると、外側に”ねじれて”変形しているのがお分かりになりますでしょうか?
(クリックでさらに倍率upしてください)
50~60年前のブローバ時計学校のテキストや、スイス/フランスの技術解説書籍でも、
修正を要するヒゲゼンマイの実例として紹介されているのは、”くの字状”=水平方向
に変形した場合の修正方法ばかりです。
しかし、実際にはこのように捩れて変形する場合も多いのが実情です。
次回、どこをどうやって修正するのか、静止画像と文章だけで何とか判りやすく
解説する方法を考えあぐねているところでございます。
しばしお待ち下さい…
前の画像で、この部分からヒゲゼンマイが外側方向へ変形してしまっているのが確認できましたね。
ヒゲゼンマイが水平方向で変形している場合、○の部分をヒゲ専用ピンセットを使って左手でつまみ、(勿論、強くつまむとそこでさらに変形しますよ!)右手に持った極細ピンで、×印をつけた部分のヒゲゼンマイ外側側面を、矢印方向へ押してやります。
右手もヒゲ専用ピンセットでつまむという方法もありますが、微妙な力加減が難しく、曲げすぎてしまうこともあるので、私はヒゲゼンマイの弾性を利用しながら、ピンで押しつつ、徐々に元の形に修正するやり方を採っています。
が、しかし・・・
この画像の事例の場合、上記のような一般的な水平方向変形に対応する修正をしてしまうと、変形度合がさらに大きくなり、「ヒゲゼンマイ・スパイラル」に陥る原因となります。
次回、正解の修正方法の解説です。
正解は、赤マルで囲んだ部分です。
ここでヒゲゼンマイの自然なカーブが乱れ、その先からは同心円の形状が崩れているのがお分かりになりますでしょうか?
落下の衝撃などの場合、修正が必要なポイントは一箇所である場合がほとんどです。
(複数箇所になるのは、ピンセットやドライバーで触れてしまったり、という修理者のミスによる場合が多い)
形状が変化してしまった箇所を見誤り、間違ったポイントでヒゲゼンマイを曲げたりすると、形状変化がますます大きくなり修正ポイントの見極めが
より一層困難になる、という文字通りの”ヒゲゼンマイ・スパイラル”(洒落です・・私が勝手に命名しました)に陥ります。
次回は具体的な修正の方法について書こうと思います。
お客様がこのサブマリーナをオーバーホールのために持ち込まれた際、私が
「赤サブですね。結構なお値段で買われたのではないですか?」
と訊ねたところ、
「あ、父が30年以上前に商用で渡欧した際に購入してきたもので、私はあまり詳しくわからないんです。父が亡くなったので、自分で使おうかと思いまして」
とのことでした。
伝え聞く限りでは、販売されてからの履歴がこれほど確実な赤サブもないでしょう。
”赤サブ”なる、時計本来の価値(品質)に伴わない希少価値によるプレミアなどが
存在しなかった時代に購入し、そのままワンオーナーのもと、定期的に正規代理店であるリーベルマン商会~日本ロレックスにおいてメンテナンスされてきたという点で、紹介に値する時計であると思い、ここでとり上げてみました。
全面的なリダンはせず、オリジナルのロゴの上に赤色のロゴを載せてプリントする方法、
(普通のRef.1680を赤サブに換える方法)私は知ってますよ。
これがどういうことを意味するかは、皆さんのご想像にお任せします。