湿気の混入と紫外線で文字盤が変色したロレックスです。
塗料が改良されたせいか’90年代以降に製造された時計
手首が露出する事の多いこの季節、特にブルー文字盤をお
湿気の混入と紫外線で文字盤が変色したロレックスです。
塗料が改良されたせいか’90年代以降に製造された時計
手首が露出する事の多いこの季節、特にブルー文字盤をお
5年前にオーバーホールを行ったお客様から、特に異常が無いにもかかわらず再びオーバーホールのご依頼をいただきました。
当社HPや前回のご説明で4~5年ごとの定期オーバーホールがいかに重要であるかを認識したからだそうです。
その結果、オーバーホール¥29,160+切れてはいないものの予防的に交換するゼンマイ¥3,780=¥32,940という、当社では最も安い見積もりとなりました。
定期オーバーホールを怠ると交換部品が多くなって修理代が嵩むばかりではなく、本体ケースやブレスのサビなどが進行し、本来数十年は使用可能なロレックスといえども寿命が縮まる事もあります。
この度の5年ぶりのお客様ですが、先の投稿を見て夏場は時計を外しておこうと判断し、ちょうどいい機会だからと定期オーバーホールをご依頼くださったそうです。
今の時期は汗や湿気による悪影響の他、手首が露出するため紫外線によって文字盤/針の劣化を招く事もあります。
積雪地域の方が車やバイクの重整備を乗る事が出来ない冬場に依頼するように、6~9月は時計の定期オーバーホールを行うのも良いかもしれませんね。
定期オーバーホールの重要性については以下の当社HPをご覧ください。
https://www.yuuki-tokei.com/OH_kaisetsu.html
全体の数%以下ではありますが、実際に現物を拝見した段階で事前概算見積りの金額を上回る事があります。
今回のケースでは正式見積もりにこの画像を添付して、以下のような説明をいたしました。
当社:「オイル切れによって自動巻ローター芯が摩耗しているため、交換が必要な状態です。
※摩耗した金属粉がかなり軸芯周り周辺に拡散していました。添付画像をご参照ください。
この状態ですと自動巻き上げ効率が低下し、動作持続時間が短くなっていたと思われますが、手巻きを併用していたり、翌朝に停止していないと症状が自覚出来ない事もございます。
特に不具合無しとの事でしたので、概算見積り時にはローター芯交換を加えなかった事をご了承ください」
その結果、お客様からは以下のように大変快く進行のご連絡をいただきました。
お客様:”早々にご対応をいただき誠にありがとうございます。お送りいただきました内容で作業を進めて下さい。
画像まで添付していただき対応の素晴らしさに改めて感心させられています”
事前概算見積りについての詳細は以下のページをご覧ください。
https://www.yuuki-tokei.com/Mitsumori.html
6~9月は時計を連日装着せずに休ませておく事も選択肢の一つです。
結果として時計の寿命を延ばし、修理/メンテナンス費用を抑制する事も可能です。
この時期は高湿度+汗による時計へのダメージが非常に大きいからです。
(※汗の質や使用状況等かなり個人差があります。)
装着中は常に湿気にさらされるため、ブレスやベゼルの隙間などに汗や皮脂有機物が堆積し、ステンレスですらサビや腐食が発生する原因となります。
一度サビの発生したブレスや本体ケースは大変高価な全交換以外には新品時の状態に回復させる事は不可能です。
時計の外装に使用されるステンレスは空気の循環があまりない環境だと保護酸化膜の形成が不可能になり、そこへ水分(=塩分を含んだ汗)と気温20℃、湿度65%以上という条件が揃うとサビが発生しやすくなります。
汚れの蓄積したブレス内側や時計本体ケースと裏蓋の隙間はまさにこの条件に当てはまります。
汗や汚れがついたまま5年以上使用され続け、内外装にサビが発生したロレックスをこれまで数多く見てきました。
日本において6~9月に時計を使用する事がサビの発生を促進させるという見解は、以下のサイトに詳しく紹介されている「クライモグラフ」によるデータに基づいております。
http://www.adpack.jp/adpack/
雨が多く、湿度が高い英国にある旧車が日本よりサビが少ないと言われている理由は気温が低いからだとわかります。
昨日夜に洗濯機で洗ってしまったロレックスが持ち込まれました。
幸い、本日まだ動作する状態でご持参いただいたので、水入り時計としては重症の部類に入らない状態で応急処置が出来ました。
ただし、自動巻き切り替え車に湿気が滞留したようで、片方だけが画像のように錆びておりました。
水入りさせるとわずか一日で時計の内部はこれだけ錆びるという、データとして大変貴重な実例です。
気づかぬうちにリューズが緩んでいたり、パッキンが断裂していることもあります。
どうか、どうか防水時計でも出来る限り水気や汗からは遠ざけてください。
断言します。「日本の時計の故障原因の過半数は湿気である」と。
時計雑誌などにもたまに紹介されていますが、一般的にオーバーホールが完了すると、裏蓋の裏側に日付や修理者独自のサインを入れます。
よく目にするのが、画像のように油性マジックで線を引いた後、先の尖った針状の鉄棒で”ケガいて”文字を書き込む方法です。
ケガくのは100年前から行われている伝統的な方法で、日本ロレックスでも採用されている一般的な手法なのですが、私はどうしても抵抗があるのです。
近年になり、油性マジックを併用するようになって非常に浅くなったとはいえ、裏蓋にあまり美しいとはいえない”跡”を刻み込んでいるような気がしてならないのです。
私は、いつでも消す事ができる極細油性マジックで書き込むだけにしております。
サインをケガくと、超音波洗浄を施してもサインは消えず、これまでの履歴がわかるという利点があります。
しかし、メーカーなどで一貫したサインでないと正確な履歴はわからないことが多いですし、湿気や水分が混入した場合、オーバーホール直後であっても、その履歴は有効ではなくなりますので、履歴よりも個々の状態を目視、点検して把握するほうが有効であると考えております。
見えない内部であっても、これだけの消えない跡を刻み込むことには躊躇してしまいます。
私がちょっと神経質に感じすぎているだけなのかもしれませんが・・・
僭越ではございますが、ここは時計のユーザーである皆様に質問をさせていただき、忌憚の無いご意見をコメント欄にて、ご回答いただければと思います。
時計の裏蓋に刻み込む形式のサインにはユーザーとして抵抗を感じますか?それとも特に問題ないと感じるでしょうか?
私と反対意見の方も、”見えない部分ですし、キズとは違うものですから全く気にしませんよ”等々、本当に遠慮なくお答えくださると嬉しいです。
率直なユーザーの方々の考えを聞いてみたいものですから
—
そうしましたら、以下のようなコメントが寄せられました。
私が否定派という事で、比較的同調いただいたコメントが多かったとは思いますが、ケガかずに済むならそれに越したことは無さそうです。
●書いてもOKです(^^ゞ
私は自分で極細マジックでかいています~
●僕も書いてもOKですが、裏蓋がシースルーの場合どうなるのでしょう!?
●ケース素材が安価なもの(SUSの類)ならば気になりません。
ただ金やPtなどになると正直、入れてほしくないです。
貧乏性なもので( ̄▽ ̄;)
●僕は、極細油性マジックがいいですね!
けがいた場合、キズとして見てしまったら、気になりますからね
●私は、けがき針で書かれるのは嫌ですね。
ミクロに考えれば、キズなので、錆も入りやすいですよね。
むしろ修理明細がきちんと書けるようなログブックみたいなものが予め時計に添付されていることが望みです。
●まぁ職人の腕の良し悪しはこの際、置いておくとして、きちんとOVHを受けた証であるはずなのに、逆にそうは見えなくしている気がします。
と、言うことは、時計を預ける身としては、何十年後かの姿を想像して最良と思われる方法をとってくださいとしかお願いできないですね。
勝手な想像ですが、私が職人だったら他人のサインなんか見ません(要するに目の前にあるのブツが現実)が、実際のところどうなんですか?
●遺跡やお寺の落書きみたいですねぇ。
意識のレベルは様々でも、伝えたい何か、残したい何かがそこにはあるのだと思います。
オーナーさんを含めて、時計の裏ブタに意味も無く落書きをする人はいないと思います。
ケースのキズ取りの依頼はあっても、裏ブタのキズ取りまで依頼されるオーナーさんって、どのくらい居られるのでしょう。
そこら辺が答えじゃないのかなぁと思います
●自分は油性マジックならオッケーです
●これじゃ、ラグの傷なんか、気にしないのかなぁ。
●私はなんだかいやだな~。
でもシール貼るわけにもいかないでしょうし・・・
何かいい方法はないものですかね。
●小傷に見えるのは殆どサインなんですねー!?
コレは少々酷いと思います(汗)
●単純に、またOHに出した時は2行になるんですか、
親父の時計にも、数字のケガキがありましたが、
次が疑問です
●正直、あまり美しいとはいえません・・・
2000年以前に製造されたタイプを日本ロレックスでオーバーホールすると、ブレスレット付け根内側に画像のような固有番号の一部が刻まれます。
これは先の尖った針状のものを使用して手書きで刻まれるので、工場出荷時には無いものです。
作業中の取り違え防止のためと思われますが、見えなくなる箇所とはいえ傷のようにも感じるので、私が所有者なら出来れば刻んで欲しくないなぁ、と思わせるものではあります。
現行品は固有番号が刻印されているため、現在ではオーバーホールの際に後から番号が刻まれることはありません。
ロレックス・デイトジャストを4年前にオーバーホールされたお客様から「全く異常は無いけど今回もお願いします」と大変喜ばしいご依頼をいただきました。
夏場のご使用にも留意されていたせいか、湿気の混入によるオイル蒸発/変質は最小限で済んでいました。
画像中心の赤い人工ルビーの内側40%程度に丸い淵が確認できますが、これがオイルの残量です。(ちなみにルビーの直径は1.4mm位です)
オーバホール直後よりも若干径が小さくなっておりますので、30%程度はオイルが蒸発しているのが分かります。となると、あと5~6年はオイル残量が保たれるのでオーバーホールをその分先延ばししても大丈夫じゃないの??と考えがちですが、決してそんな事はありません。
4年経過したオイルを注油棒で突いてみると、若干粘度が変化しており、油膜保持機能が低下し始めている事がわかります。
この感じですと、数年後には部品を摩耗させながら動作し続ける可能性があります。
画像は先端を0.1mm以下に研いだ注油棒でルビー軸受に注油しているところです。
毛細管現象によってオイルが綺麗な真円に拡がっていないと、油膜は5年間保持できません。
日本ロレックス/公認技術店以外でオーバーホールされた履歴のあるRef.16800サブマリーナですが、ほぼ全てのネジ溝が歪み(=俗にネジが笑う、といいます)美しく装飾された表面にはいたるところに無数の傷がついています。
ピンセットやドライバー等の工具の状態だけでなく、作業者の技術そのものがお金をいただくレベルに達していない、もしくは衰えてしまった結果です。
内部が傷だらけだったロレックス・サブマリーナですが、外装の方もなかなかの状態です。
ベゼル逆回転防止用のクリックスプリングが通常のスチールで自作されていたためにサビが発生しており、折れる寸前でした。
さらに先端が整形されておらず、これでは回転ベゼル内側の山を削ってしまいます。
機能上影響はない点ですが、スプリングのセット位置と方向が工場出荷時とは全く違う位置にあります。
また、スプリングの元の形状やベゼルのセット方法を的確に把握しておらず何度も試行錯誤を繰り返したせいか、ガラス取付枠に無数の傷がついております。
こういう作業者に扱われた時計は徹底的に疑う必要があります。
文字盤には湿気による塗装変質が見受けられたので、ガラス固定枠を外してみたら案の定、防水/防湿用のパッキンが入っていませんでした・・
※下画像がパッキンの入った状態です。
過去の不適切な作業の際にパッキンを入れ忘れられ、空気中の湿気が侵入した結果、秒針のメッキやカレンダー枠周辺の塗装はこのように劣化しておりました。
こういったNG作業は往々にして時間が経過してから悪影響を及ぼすことが多いため非常に厄介です。
パッキンの入れ忘れは致命的なミスですが、防水テストを行っていればかなりの確度でミスを発見する事が可能です。防水検査が不合格となった場合は各種パッキンやリューズ等、不良個所を特定する事が必要です。
画像のような水圧式の防水検査機を所有している工房は多いのですが、検査過程が非常に面倒なため、修理品全ての防水検査を行わない所もあるようです。
防水検査を行っていれば、本体ケース/裏蓋にサビや変形が無いにもかかわらず検査不合格となった時点で、パッキンの劣化や入れ忘れを疑ってミスを発見する事が可能です。
高圧空気を使用する防水/気密検査機があれば、防水テストが容易に行えます。
ただ非常に高価な機器のため、個人経営や小規模な時計修理店には導入されていない事も多いようです。
こういった専用機器があれば”万が一”のパッキン入れ忘れを発見する事が可能です。
これが防水検査を省略したオーバーホールの結果です。
このデイトナはリューズチューブ部から湿気が混入してオイルを蒸発/変質させた状態で使用し続けたため、サビや部品の摩耗が発生しておりました。
前回のオーバーホールからわずか2年強だそうです。
適切な検査機で防水テストを行っていれば、このような事態は防げた可能性が高いのです。
当社の修理のうち、最も苦労するのが過去に適切でないオーバーホール作業を施された場合です。
ロレックスに適した防水検査機と自動洗浄機は大変高価です。