‘工具/設備機器’ カテゴリーのアーカイブ

異業種交流

工具/設備機器 | by admin
8月 20 2011 年

前回のキリ改造工具の項で、押す力の配分が多いことを取り上げましたが、この”押す力7割、回す力3割”という法則は、ドライバーでネジを回す際にも共通しています。

一般的には鉄則となっているこの法則も、時計の世界では専門の技術解説書は勿論、ベテランから教わる際にも話題に出てくることはありません。

時計の場合、ねじの頭の溝にキズを付けるのはドライバーの形状の不備にあるのだとされ、ドライバーの形状/研ぎ方が非常に重要視されますが、この力の配分も大きな要素です。

その証拠に、経験の浅い技術者へ完璧に研いだドライバーを与えても、やはりネジの頭を傷めてしまうんですよ。

時計修理技術の世界は何よりも経験や勘が大事なのですが、そればかりに頼りすぎ、根本的な物理化学の原則を理解したり、他の分野から知識を得たりしている人があまりにも少ないと思います。

このドライバーの力加減は、クルマやバイクの修理の世界ですと基本的な常識となっていますが、時計の世界では経験として自然に身についていたとしても、知識として知っている人はどれくらいるのだろう?という感じです。

私の場合は、お客さんや趣味の分野での交流で知り合った方々が、様々な分野でのエキスパートである事が多く、そういった方々と交流することによって、材料や加工方法、ケミカル等々、時計修理に応用できる様々な知識を得る事が出来ています。

ドライバーの力配分のように、異業種の方々には常識でも、時計の世界では全く知られていないことが多々あります。

これから、徐々にそういったものも紹介してゆきたいと思っています。

ピンセット

工具/設備機器 | by admin
8月 20 2011 年

前回の”キズを付けない”という記事を見て、先の固くないピンセットを使えばよいのでは、と思った人も多いでしょう。

こんなピンセットがあります。

上の白いのは、先端が針押しやガラス押し込みコマでおなじみの”デルリン”という樹脂製で、下のはプリント基板に使われているベークライト製のピンセットです。

私が今持っているのはこの2種ですが、その他にも昔からある真鍮製をはじめとして、現在はセラミック、カーボン等々様々な材質のピンセットがあります。

こういったものを使用すれば、時計部品にキズが付くのを防ぐことができます。

ただ、こういったピンセットって、シャープに研ぐと先端の”合い”がイマイチになって部品がつかみにくくなったり、強度が不足したりするので、バネのような着脱の際にテンションをかける必要のある部品を扱うのにあまり向いているとはいえないんですよ。

なのでデルリンピンセットの先を研いだものは、鏡面+メッキの針を掴むときに、ベークライトのほうは主に仕上げの施された”受け”を掴む際に使用しています。

バネ性のある部品の場合は、画像のような先端を2液エポキシで固めた柳の棒を使用しています。

これでバネのアームを外せば、アーム本体は勿論、地板にキズを付ける事はありません。
さらに、薄手のビニールを切ったものを上に被せてから着脱すれば、キズと部品が飛んでいくのを同時に防止できます。

鉄製ピンセットでも、このビニール作戦でほとんどの場合キズを防ぐことができます。

エポキシで固めるのは、先端が崩れて木屑が飛び散るのを防ぐためです。

普通の楊枝でもいいのですが、先端が崩れやすいんですよね。
楊枝と竹串の中間の粘りがあって、先端を削りやすい柳製の”掃除棒”が最も使いやすいです。
もしくはちょっとお高い料理に付いてくる、柳製の割り箸を削ってもOKです。

今はわかりませんが、一昔前に”柳楊枝”という商品名なのに、材質は一般の楊枝と変わらないパチもんがありましたのでご注意ください。

そうそう、余談ですが、東京で仕事してる一部の年配の職人は、この柳の箸から削った掃除木を”ゲイシャ”なんて言ったりするようです。

落語の小噺系の駄洒落の言葉かけなんですが、わかりますか??

三種の神器(?)

工具/設備機器 | by admin
8月 20 2011 年

 

私がヒゲゼンマイ修正に使用するピンセット3種です。

売っている状態ほぼそのままのものは、一番下のものだけで、後の2本は、隙間の狭いヒゲゼンマイ(主にヴィンテージ女性用)に使用するために先端を極めて細く削ったり、顕微鏡での作業で視野を確保するために、曲げ加工を施しています。

また、この3本は先端の形状だけでなく、閉じる際に要する力(いわゆる”コシ”)も大きく異なっており作業の内容や、ヒゲゼンマイの弾性によって使い分けます。