オメガ・スピードマスターのブレスレットにサビが発生しています。
夏場に連日使用して汗が乾燥/蒸発する間が無いと、ステンレスでもサビが発生します。
サビが進行すると、突然ブレスがちぎれて時計を落下させ高額の修理となります。
体質(汗の質)も大きく影響しますが、夏場は時計の使用を控えた方が無難です。
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弾性があれば力が加わっても折れずに機能し、柔らかければ曲がったままになります。
本体ケースに組み込んでプッシュボタンで操作する限り、このバネにそうそう無理な力は物理的にかけられません。
という事は、このバネが規定以上に「硬かった」のがリセットレバーの固さを生み出していたのではないかと推測いたしました。
そこでこのバネを新品に交換してみたところ、いとも簡単にリセットの固さが解消されました。
たまたまこのバネの熱処理などがうまくいってなかったのか、何らかの後天的な理由によるものかはわかりませんが、結果論としてバネが硬かったのが原因だったようです。
これまで数多くのcal.861をオーバーホールしましたが、こんな事例はこの個体だけでしたので、非常に珍しい例であるのは間違いありません。
手巻きスピードマスターに搭載されているcal.861/1861系はリセットレバーとハンマーの位置(噛み合い)を変化させてリセットの固さを調整できるようになっているのですが、前回のオーバーホールの際、その調整では固さが解消できない事が判明していました。
当時消去法で考えていれば「残る原因はこのバネしかない」という結論に達し、試験的にバネを交換してみるという方法にたどり着けたのですが、顕微鏡で検査してもバネには外観面で異常が無いという時点で見逃してしまいました。
今では時計の異常原因を突き止める場合、私は様々な場面でこの消去法を多用しております。
この時点では8年経過している事もあり、手巻きスピードマスターの持病ともいえるリセットピンが折れた事による不良で、12時間計のスリップはストップレバーの調整で解決の見通しを立てていました。
その際「その後もリセットは固いままだったので、やはり改善できませんか?」との相談を受けました。
前回の診断結果を聞いて、たまにスタート/リセット操作をしていたらしいのですが、固さは変化無かったとのこと。
それを聞いて私は「スタート/リセットによって部品のあたり=馴染みは出てきたものの、8年経過するとオイル切れを起こしていてリセットが固くなっていたとしても不思議はない」と推測いたしました。
ただ、この手巻きスピードマスターの場合、リセットボタンの固さについては個体差が結構ありますので、依頼者の方には「今回のオーバーホール後も固さは完全に解消できないかもしれません。レバー類の切削や加工を行うと、工賃だけかかって結果を伴わない可能性もあるので、個体差の範囲内と思われる場合は、そのままになります。」と伝えておきました。
その後まもなく修理品が届いたので、早速点検したところ、リセット出来ない症状はこの手巻きスピードマスターに頻発するリセット用ピンが折れたものではありませんでした。
リセットピンの折れについては、また機会を改めて記事にしたいと思いますので今回は割愛しますが、このcal.861系統の持病ともいえるほど頻発いたします。
リセットピンの折れでは無かったので、裏蓋を外しただけではリセット不良の原因がわかりません。
そこで、通常は見積もり段階では行わないのですが、文字盤まで外してみました。
するとこれまで経験したことの無い部品が破損していたのです。
画像右上の、大きいネジで固定されている弧を描いたバネが根元で折れています。
どうやらこのあたりに問題のポイントがありそうです。
その際、所有者の方から「クロノグラフのリセットボタンが固いので、その調整も同時に出来ませんか?」との申し出もいただきました。
このスピードマスターPro.に使用されているムーブメントは、元々センター秒針と30分計の2レジスターで基本設計されていたところに、12時間計を後から半ば強引な設計で追加したという経緯がありますので、そのせいでリセットボタンはかなり固めの感触となっています。
12時間計が追加されたのは前身のcal.321時代に遡ります。
また、このパターンはバルジュー23と72についても同様で、同じくやや強引な設計となっておりますが、リセットレバーが凝った造りとなっているおかげで、cal.321~861のような固さではありません。
それはさておき、使用者がリセットを固く感じるのは主にオイル切れによるものである事が多いので、オーバーホールの際に注油を確実に行えば大丈夫だろう、と思っておりました。
ところが、オーバーホール後いくら注油箇所を確認し直してもプッシュボタンが固いのです。
顕微鏡で確認しても部品の摩耗や変形などは無く、ごくわずかにリセット関連のレバーの面取りなども施しましたが完全には解決しませんでした。
この時は「リセットボタンを押した回数もそれほど多くなく、部品同士のあたり=馴染みがまだ出ていないせいで固い可能性もあるので、これから使用していけば徐々に軽めの感触になるかもしれないです」と返答して、しばらくこのまま使用してもらう事にしました。
この時点でこれ以上の追及をしなかったのは、明らかな異常が見られない状況で、推測だけで部品の交換や加工をしてしまうと無駄な費用が掛かるだけでなく、根本的な原因が発見された際に復旧が大変困難になる場合があるからです。
ところが、それから8年が経過して、どうやら原因と思われる点が判明したのです。