前回の”キズを付けない”という記事を見て、先の固くないピンセットを使えばよいのでは、と思った人も多いでしょう。
こんなピンセットがあります。
上の白いのは、先端が針押しやガラス押し込みコマでおなじみの”デルリン”という樹脂製で、下のはプリント基板に使われているベークライト製のピンセットです。
私が今持っているのはこの2種ですが、その他にも昔からある真鍮製をはじめとして、現在はセラミック、カーボン等々様々な材質のピンセットがあります。
こういったものを使用すれば、時計部品にキズが付くのを防ぐことができます。
ただ、こういったピンセットって、シャープに研ぐと先端の”合い”がイマイチになって部品がつかみにくくなったり、強度が不足したりするので、バネのような着脱の際にテンションをかける必要のある部品を扱うのにあまり向いているとはいえないんですよ。
なのでデルリンピンセットの先を研いだものは、鏡面+メッキの針を掴むときに、ベークライトのほうは主に仕上げの施された”受け”を掴む際に使用しています。
バネ性のある部品の場合は、画像のような先端を2液エポキシで固めた柳の棒を使用しています。
これでバネのアームを外せば、アーム本体は勿論、地板にキズを付ける事はありません。
さらに、薄手のビニールを切ったものを上に被せてから着脱すれば、キズと部品が飛んでいくのを同時に防止できます。
鉄製ピンセットでも、このビニール作戦でほとんどの場合キズを防ぐことができます。
エポキシで固めるのは、先端が崩れて木屑が飛び散るのを防ぐためです。
普通の楊枝でもいいのですが、先端が崩れやすいんですよね。
楊枝と竹串の中間の粘りがあって、先端を削りやすい柳製の”掃除棒”が最も使いやすいです。
もしくはちょっとお高い料理に付いてくる、柳製の割り箸を削ってもOKです。
今はわかりませんが、一昔前に”柳楊枝”という商品名なのに、材質は一般の楊枝と変わらないパチもんがありましたのでご注意ください。
そうそう、余談ですが、東京で仕事してる一部の年配の職人は、この柳の箸から削った掃除木を”ゲイシャ”なんて言ったりするようです。
落語の小噺系の駄洒落の言葉かけなんですが、わかりますか??