画像はスピードマスターオートマ3510.50のブレス取り付け部分ですが、おかしな点があるのがわかりますでしょうか?
そうです、バネ棒を取り外す際に、縮める(狭める)ための工具を引っ掛ける段が無いタイプのバネ棒が装着されているんです。
これは10年前までのロレックスに代表される、ラグの外側までバネ棒用の穴が貫通しているタイプのケースにしか使用してはならないバネ棒です。
二枚目の画像でいうと、上が段付き、下が貫通タイプです。
で、これに何故憤慨しているかと申しますと、この貫通タイプを装着されると、ラグに穴が開いていないわけですからバネ棒を縮める事が出来ず、ブレスの取り外しが基本的に不可能になるんです!
この時計のオーナーさんがあまり深く考えずに、手許にあるバネ棒をご自分で装着してしまったのでしたら、まぁ、しょうがないということで、無理に取り外さずに作業するのですが、この貫通バネ棒、ロレックス以外にも1970年代以前の時計で多く使用されていた為、市井の古い時計店などに部品在庫として残っている事も多く、そこで装着されてしまう事が少なくないようなのです。
後から外せない事を知っていて、手元の在庫部品で安直に済ませたのだとしたら悪徳と言っても良いでしょうし、それすら知らずに、装着するのは簡単だからと、無思慮に装着していたとしたら、基本的な知識に問題があると言えます。
様々な形状のケース/ブレスを採用した時計が発売されている昨今、私だって全てのパターンを把握しているとは言いませんが、こういった基本的な認識や知識に欠けた時計店には、今すぐ看板を降ろしてもらいたいものです。
”勇退”や”引き際”という言葉があります。
先達の方々に対して生意気な事を言うようですが、感覚が衰えてきたら、お客様に迷惑をかけない様、後進に道を譲ると言う事も必要なのではないかと思います。
しかし、私の知っている年配の時計屋の店主さんの中には、齢70を超えても技術の交流会や勉強会に積極的に参加して、貪欲に知識を吸収し、私などまだまだ及ばない、尊敬すべき先達もいらっしゃる事を併せて明記しておきます。