前回のオーバーホールから8年が経過した先月、「精度は問題ないが、クロノグラフのリセットが出来なくなり、12時間計だけ動き出してしまう」という症状で再び依頼がありました。
この時点では8年経過している事もあり、手巻きスピードマスターの持病ともいえるリセットピンが折れた事による不良で、12時間計のスリップはストップレバーの調整で解決の見通しを立てていました。
この時点では8年経過している事もあり、手巻きスピードマスターの持病ともいえるリセットピンが折れた事による不良で、12時間計のスリップはストップレバーの調整で解決の見通しを立てていました。
その際「その後もリセットは固いままだったので、やはり改善できませんか?」との相談を受けました。
前回の診断結果を聞いて、たまにスタート/リセット操作をしていたらしいのですが、固さは変化無かったとのこと。
それを聞いて私は「スタート/リセットによって部品のあたり=馴染みは出てきたものの、8年経過するとオイル切れを起こしていてリセットが固くなっていたとしても不思議はない」と推測いたしました。
ただ、この手巻きスピードマスターの場合、リセットボタンの固さについては個体差が結構ありますので、依頼者の方には「今回のオーバーホール後も固さは完全に解消できないかもしれません。レバー類の切削や加工を行うと、工賃だけかかって結果を伴わない可能性もあるので、個体差の範囲内と思われる場合は、そのままになります。」と伝えておきました。
その後まもなく修理品が届いたので、早速点検したところ、リセット出来ない症状はこの手巻きスピードマスターに頻発するリセット用ピンが折れたものではありませんでした。
リセットピンの折れについては、また機会を改めて記事にしたいと思いますので今回は割愛しますが、このcal.861系統の持病ともいえるほど頻発いたします。
リセットピンの折れでは無かったので、裏蓋を外しただけではリセット不良の原因がわかりません。
そこで、通常は見積もり段階では行わないのですが、文字盤まで外してみました。
するとこれまで経験したことの無い部品が破損していたのです。
画像右上の、大きいネジで固定されている弧を描いたバネが根元で折れています。
どうやらこのあたりに問題のポイントがありそうです。