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ロレックス デイトジャスト オーバーホール 修理(有)友輝 全国配送対応

ロレックス デイトジャスト Ref.16233G オーバーホール

  • ロレックス デイトジャスト Ref.16233G

    多少の進み/遅れはあったものの停止せずに動作していたため、「そのうちオーバーホールしなきゃ」とは思っていたものの、気がつくと20年間オーバーホールせずに毎日使用し続けてしまい、いよいよ停止してしまったロレックス・デイトジャストRef.16233Gです。

    停止する前に10年以内でゼンマイが切れてしまう事も多いため、20年間使用される事は稀有なのですが、ロレックス、特にこの時計に搭載されているcal.3135はオイル切れを起こしていてテンプの振り角が相当低下しても精度が変化しない、という特性があります。

    これは部品の工作/加工精度が高く、駆動エネルギーのロスが少ないためです。

    本来は高精度と長い動作持続時間を維持する目的でそのように設計されているのですが、結果的には想定外である「オイル切れを起こしていても、しばらく問題無く動作するので、最終的に停止した場合は部品の劣化/摩耗が激しい」という最悪の事態を招くのです。

    お預かり時に撮影したこの画像は非常に綺麗に撮影出来てしまったのでなかなか分かりにくいのですが、20年の間に蓄積された汚れや、リューズの摩耗による湿気の混入により文字盤が劣化/変色していたりするなど、外装だけでも結構ハードな状態です。

    20年間オーバーホールしないで使用したロレックスは、どれだけダメージを受けていて、どれだけの部品交換が必要で、いったいどのくらいの修理費用がかかるものなのかを以下に紹介いたします。

    ロレックス ブレス 汚れ

    まずは品番とシリアルを確認するためにブレスを外すのですが、本体とブレスをつなぐフラッシュフィット(弓管)部分には、20年の間に蓄積された汚れが固着しておりました。

    この固着物の正体は、汗や体からの分泌物に空気中の汚れやホコリが混じったものです。
    この汚れが汗で溶け出し、ワイシャツ(西日本ではカッターシャツ)の袖を汚すこともあるそうです。
    ワイシャツが汚れるだけならまだしも、この汚れは時計ケース本体やフラッシュフィットのサビの原因となるのです。

    当社HP↓でも紹介しておりますが、汚れを放置するとステンレスといえどもサビが発生します。
    →サビが発生したロレックスの解説はこちら

    オーバーホールには内部機械の整備だけではなく、こういった汚れを除去するという目的もあるのです。
    巷では内部の機械を動くようにするだけで、ほとんど外装の洗浄はせずに「オーバーホール」を謳うところもあるようですが・・

    DATEJUST 刻印

    やはり影響は本体ケースにまで及んでいました。
    表面の一部に凹んだような腐食が発生しているのがわかります。

    今回は奇跡的に大丈夫でしたが、フラッシュフィット内側にロウ付けされている、バネ棒固定用のパイプが腐食している例を数多く目にします。
    こういった腐食を防ぐ意図なのか、近年のロレックスはフラッシュフィットが無垢材からの切削によって作成されています。

    20年前と比べてロレックスの新品価格はかなり上昇しておりますが、ブレス部分が数多く改良された事によるコストの上昇がその主な理由と思われます。

    ただ、純粋にブレスの製造コストだけを上乗せしたのでは無いような気がするほど、価格が上がっていますし、作業者からすると旧タイプのブレスのほうが何かと楽なので、新タイプブレスはオプション選択になってくれればいいのにな、と個人的には思っております。

    ロレックス 裏蓋 シール

    そして、裏蓋の保護シールも20年間そのままでした。

    この保護シールを貼ったまま使用し続ける危険性については、別ページで解説しておりますので、そちらをご覧ください。
    →裏蓋保護シールについての解説はこちら(Q5参照)

    幸いにして、裏蓋表面の腐食はほとんど発生していませんでした。

    ロレックス リューズ交換

    西暦2000年頃までに製造されたロレックス、特にステンレス/18Kのコンビモデルの場合、このようにリューズが腐食と摩耗によってねじ込みが不可能となる事態が数多く発生します。

    ねじ込みが完全に行えなくなる前でも密閉/防水機能が低下してゆきますので、徐々に汗を含む湿気などが内部に混入し、オイルの蒸発や変質を引き起こして部品の摩耗を進行させ、更には広範囲のサビの発生につながります。

    これは、2000年頃までのリューズが、真鍮の下地に18Kを被せてある構造の為に腐食が発生するものと思われます。
    異種金属が接触していて導電性の液に浸された場合、電位が低い金属が+、電位が高い金属が−となり、局部電池を構成して+側の金属がイオン化し腐食します。

    リューズの場合、導電性の液が汗や湿気、腐食しにくい18Kがマイナス側、腐食しやすい真鍮が+側となります。
    画像では、真鍮が腐食し変質した結果である緑青が、雄ネジの切ってあるチューブ側へ付着している事が確認できます。

    湿度の低い欧米ではあまり問題にならなかった事と、製造コスト+工作加工上の問題から長らくこの製法でリューズが製造されてきたものと思われますが、近年新しい製法のリューズに切り替わって耐腐食性が大幅に向上し、リューズ交換の比率が以前と比べて大幅に下がっております。

    ただし、この新型リューズは現在大変高価な金額で流通していて入荷も不安定なため、当社では元のリューズの”ねじ山再生”を行う事によって、新品交換の半額以下の費用でこの問題を解消しております。

    →リューズねじ山再生についての解説ページはこちら

    ロレックス 自動巻 ローター

    裏蓋を開けて内部に目を移すと、内部に侵入した湿気でオイルが変質し、自動巻き用ローター中心軸が錆びていました。

    この半円状の自動巻きローターは、当然ながら内部機械では群を抜いて重量のある部品です。
    そうでないと、とても腕の動きでゼンマイを巻くという作動は不可能ですから。

    高級時計ではローター外周部にプラチナや18Kを使用して慣性モーメントを生み出す設計になっているものすらあるくらいです。

    ここで厄介なのは、重量がある部品なのでオイルが切れた状態では円滑さは失われるものの、そのまま動作し続けてしまう点です。

    中心軸のオイル切れを見分ける方法としては、ローター中心軸部のオイル切れを起こした時計を軽く振ると、わずかに”ブーン”という感触=音や振動が感じられるようになります。

    ただし、これも万人が気づくような音や振動ではありませんので、微細な感覚を感じ取る経験が必要ですが・・

    オイル切れのまま使用し続けた場合、当然ローター中心軸が摩耗するために、様々な悪影響を及ぼします。

    ロレックス 文字盤交換

    ガラス越しでケースの陰にもなるので、最初の画像でもあまり目立たなかったのですが、直接文字盤を見ると、湿気でこのような状態になっております。

    16233Gではかなり珍しい黒文字盤なので残念!

    湿気が混入すると、内部の機械部品が錆びるのは勿論なのですが、このように文字盤の塗装の状態が変化する事も多いのです。
    この時計の場合、針のメッキのダメージはほとんど見受けられません。

    この逆のパターンで、文字盤はほとんどダメージが無いのに、針だけ変色や腐食が進行している場合もあります。

    メーカーによって塗装やメッキの仕上げが異なるために、文字盤が先に傷む場合、針が傷む場合等の違いがあるのかもしれませんが、同じモデルでもパターンが異なる場合があります。

    このあたりはお客様の使用状況などを詳しく聞き取って分析し、どのような過程を経てそうなるのか、今後検証したいところです。

    ROLEX リューズ

    リューズとムーブメントを接続する巻き芯が錆びていることから、リューズねじ込みが効かなくなる前から防水不良となっていて、長い間ここから湿気が侵入していた事がわかります。

    巻き芯のサビが進行すると、通常の方法ではムーブメントから分離することが出来なくなる為、外装ケースからムーブメントを取り出せず、にっちもさっちもいかなくなり整備/オーバーホールがその時点から先に進まない、という最悪の事態が起こります。

    この時計の場合は幸い無事でしたが、ロレックスで現在でも採用されているcal.3135系列の機械は、そういった場合でも、何とか巻き芯を抜く事が模索出来る設計となっています。

    このあたりは、重症の巻き芯サビが発生した時計が入ってきたときにでも、また機会をあらためて紹介させていただきます。

    cal.3135 歯車 ロレックス

    酸化したオイルがサビの原因となり、さらにそのサビの成分が研磨剤のような役割をしてしまい、3番歯車の軸が上下とも摩耗しています。

    この3番歯車が停止の直接の原因でした。
    試験的に実証済なので判るのですが、この状態でもサビを除去すれば、とりあえず停止する事は無く動作します。

    ただ、テンプの振り角は確実に落ちますので、振動や姿勢差といった外的要因が加わると精度が乱れます。
    ロレックスの高精度を復活させるには、ここまで摩耗/変形した歯車は交換が必須となります。

    過去、正規代理店以外でオーバーホールされた履歴のあるロレックスで、まだオイルが残っている状態(=動作している)であるのに、こんな有様の歯車をいくらでも目にしてきました。

    部品の入手が難しく、たとえ入手できたとしても高価なロレックスの部品の場合、見積額に余裕が無くギリギリだったりすると作業する側が交換を躊躇しがちなので、摩耗した歯車をそのまま継続して使用する傾向があります。

    特に中古で販売される前にオーバーホールされた場合、買い取り額と売価の関係で出来る限り交換部品の点数を抑える傾向にありますので、こういった摩耗しきった部品でも使用してしまう場合があるようです。

    勿論、一部の販売店を除いてそんな事はしていないと思いますので、誠実な中古販売をしているお店は、自信を持って「当店ではどこで分解されても恥ずかしくない整備をしております」と胸を張ってくださいね。

    20年間オーバーホールせずに使用し続けたロレックス・デイトジャストRef.16233ですが、トータルの見積もりは以下の通りです。

    オーバーホール¥26,250
    ゼンマイ交換  ¥3,675
    ローター芯交換 ¥6,300
    3番歯車交換   ¥5,250
    歯車芯研磨×2  ¥2,100
    リューズ再生  ¥15,750
    合計    ¥59,325(※修理完了時の価格です)

    メーカー/正規代理店でない限り、ロレックスの部品代には「定価」が存在しません。

    という事は、オーバーホール基本料金が安くとも、部品代が高価であれば結局一緒どころか、むしろ高額の修理となる事例も考えられます。

    それにしても、多くの修理会社でオーバーホール基本料金は目立つように全面に打ち出しているのに、部品代は全く明記されていない場合が多いのは何故なんでしょう??

    様々な事情や方針もありますので、一概にどちらが良い、と断言できるものではありませんが、当社では「自分が修理を依頼する側の立場だとしたら、事前にHPで部品代まで含めたトータルの修理金額が明記されている」ほうが安心いたしますので、全修理数の10%以下である、5万円を超えるこのような高額の修理事例も金額を明記するようにしております。

    ROLEX DATEJUST Ref.16233G

    条件の違いからか、修理前のほうがきれいな画像となっておりますが、無事にオーバーホールが完了いたしました。

    当社に依頼されるロレックスのうち、基本料金が高いデイトナや、交換部品が多くなる1990年以前に製造されたものを除いた90%のものは、オーバーホール&部品交換で3.5〜3.9万円という金額の範囲内に収まっておりますが、10年以上オーバーホールされずに使用し続けた場合は、このような\59,325という高額の修理代がかかる事も珍しくありません。

    それでもこのお客様からは「20年の間に必要とされるオーバーホールを3回は怠ったのだから、これくらいで済んでよかった」とおっしゃってくださり、後にご友人である別のお客様までご紹介いただき、依頼者・作業者双方にとって良い結果となりました。

    ただし、ほぼ機能的な回復は果たせたとしても、10Pダイヤ入り文字盤は劣化したままとなります。

    この文字盤交換だけで、軽く今回の修理代金は吹っ飛んでしまいます。

    このように定期オーバーホールを怠ると、完全には「回復不能」なダメージを負う事もあり、新品時の状態を100とすると、実用上の大きな支障はなくとも外観面などで80から90の状態までにしか回復出来ない事もあります。

    リューズやブレス、文字盤といった基本的に交換以外での完全な修復が困難な部品ほど、ダメージを被る事が多いのです。

    オーバーホールは内部の整備だけでなく、サビや腐食の原因となる汚れなどを除去する超音波洗浄も含んでおります。


    当社にご依頼いただくうちのわずか3%弱の方ではございますが、新品購入から5年ごとのオーバーホールを欠かさず、自覚症状が発生する前にオーバーホールをご依頼いただいたくようなお客様の場合、部品交換を含めて¥31,500〜¥36,750という金額で済むことも珍しくありません。

    20年というスパンで考えますと、5年ごとのご依頼で¥36,750×4回=¥147,000、1年あたりの維持費は¥7,350となります。

    ほぼ毎日使用され、夜間も動き続ける事もあるロレックスにおいて、この1日あたり21円未満というコストを高いとみるか安いとみるかは、個人個人の価値基準が異なりますので、ここでは申し上げない事にいたします。